解題・説明
|
「ももて」は的射の行事で、馬に乗らずに弓で的を射る信仰行事で、主に正月や春先の行事として、その年の吉区を占う年占い的な意味と、悪魔を祓う破魔の意味を持つ。昔は農山漁村集落で行われていたが、現在は県内でも数カ所に残っているのみである。櫃石の場合は旧暦1月11日に、氏神王子神社前庭で行われ、破魔の意味が強く、その年の豊穣を願う意味もある。 島中で選ばれた11人の裃姿の射手が、大前5人、中1人、関5人と定められた席次から、島内各神社・小祠22社の神名を称えながら、小笠原古流で三手から一手の矢を奉射する。終わる毎に各神社の御幣を射手に戴かせ、お供えの白飯・餅・魚・豆腐と神ごとに異なった吸い物が与えられる。各神社への奉射の後は、島民有志の厄払いの奉射を行う。ついで、小的に取り替えて射手の競射となり、最初に的中した射手には笹に付けた福神が与えられて奉射は終わる。すべてを終わった射手たちは、列を作って光明真言を唱えながら島の5社に詣で、村中を駆け巡り、村の中の悪魔を追い払う。頭屋を勤めた家でも角形の的を描いた木の的が取り付けられる。近年は時間的な制約もあって簡略化している部分もある。 他所の的は鬼の字を書いたものや同心円の的であるのに対し、櫃石の的は角形の白紙に黒点を描くもので、他地域と異なっている。祭の前日に射手が葦竹を編んで、弓の長さを対角線とする四角な楯をつくり、そこに33の黒点(昔は梵字だったという)で星曼荼羅を描いた紙を貼る。それが大的で、径30センチの小的も編んで作る。
|