一〇層に区分されているが、下位のSpfa 10からSpfa 6までは、支笏火山の先駆的な活動期の噴出物で、全体にスコリア(*2)(黒い軽石)や岩片が多く含まれる。とくに、Spfa 7はスコリアに富み、層厚が比較的厚く、特徴的な黒い層となっているので、離れた地域の火山灰層を対比するうえに重要な鍵層(*3)となっている。このSpfa 7は日高山脈を越え十勝平野にも分布している。岩質は、かんらん石普通輝石紫蘇輝石安山岩である。
Spfa 5~3は火山活動中期の産出で、一般に層厚が薄く、分布もさほど広くない。つまり、火山活動がやや穏やかになったことを暗示しているものである。
Spfa 2~1は、噴火活動も後期に入ってからの産物で、斜長石と石英の斑晶に富む降下軽石の堆積物である。軽石の岩質をいま少し正確にいうと、紫蘇輝石普通輝石角閃石石英安山岩と長たらしい名称になる。最上部のSpfa 1は、層厚が厚く、千歳南方で五メートルに達し、十勝平野にも広く分布しており、浦幌町新吉野でも三五センチメートルの層厚が確認されている。
これらの降下軽石堆積物は、噴出すると天高く昇り、成層圏の偏西風に乗って東方へ運ばれたので、支笏火山の北側に位置する札幌市域ではほとんどみられない。わずかに、Spfa 1と思われる火山灰が白石台地に三センチメートルの厚さで分布している程度である。
*2 スコリア=岩滓(がんさい) 火山砕屑物の一種で、多孔質で見かけの比重が小さく、黒色、暗褐色など暗い色を示す。玄武岩のような苦鉄質のマグマの発泡によって生ずる。
*3 鍵層(けんそう) ある地域内で、比較的短期間に堆積し、相対的に大きな広がりをもち、かつ、他の層とくらべて特徴ある岩相を示す地層。それを手がかりに、その地域の地層の対比や屑序を解明できる。特徴的な火山灰層や凝灰岩あるいは石(亜・泥)炭層、化石層などが鍵層となる。