前に述べたように、札幌扇状地砂礫層は、深度二〇~二五メートルを境に上・下に二分され、境界層準にはシルト層や砂層がはさまり、そこに支笏軽石流起源の軽石も多く含まれている。この支笏軽石流の噴出年代が約三万年前であることも、すでに述べたとおりである。とすると、この境界層準に堆積した軽石を含むシルト・砂の層は、三万年前よりも新しいものであり、おそらく、最終氷期のパウドルフ亜間氷期(二万六〇〇〇年前~二万五〇〇〇年前ころ)の堆積物と推定できる。そして、上部(新期)の扇状地砂礫層は、次の亜氷期(最盛期、約二万五〇〇〇年前~一万六五〇〇年前、最終氷期でもっとも寒冷化した時期)の寒冷気候下で生産された岩屑が、温暖化がはじまった晩氷期(一万六五〇〇年前~一万年前)から完新世初頭(八〇〇〇~九〇〇〇年前)にかけて運搬され堆積したものであると考えられる。
下部(旧期)の砂礫層は、上部砂礫層の形成時期を考慮して判断すると、最終氷期のゲトワイゲル亜間氷期(四万四〇〇〇年前~二万九〇〇〇年前)の比較的温暖・湿潤気候下で堆積した可能性が強い。すると、岩屑の生産期はそれより以前の寒冷期、つまり最終氷期の亜氷期I(七万年前~四万四〇〇〇年前)ということになりそうである。
こうしてみると、札幌扇状地は最終氷期に、前後二回にわたって形成されたものであることがわかるであろう。