前述したように、石狩海岸平野の地下には、最終氷期最寒冷期の埋没谷礫層やそれより古い埋没段丘礫層と古三角州堆積物があることが明らかになった。ここでは古三角州堆積物について詳しくみることにしよう。
古三角州堆積物としたものは、主として石狩海岸平野の西側の地下に分布し、14C年代値や含まれる貝化石などから、約三万四〇〇〇年前から二万六〇〇〇年前ころの海に堆積したものと考えられる。
この堆積物は、場所により層厚が異なるが、厚いところでは七〇~八〇メートルもある。しかも、下から上まで連続的に堆積しているので、堆積層を区分するのが困難であるが、何本かのボーリング・コアから得た試料の花粉化石、貝化石などの特徴によって、下位から八軒ベッド、山口ベッド、樽川ベッドに三区分されている。ベッドというのは地層区分の最小単位のことであるが、ここでは、それぞれをこの古三角州堆積物の下部・中部・上部と理解していただければよい。
この堆積物は、下部を別にすると、中部のベッドが山側付近に、上部のものが海よりに広く、しかも厚く堆積しているようである。つまり、全体として、山側から海へ向かって、堆積物が一定の時間をかけて拡大していったような堆積様式であり、それは三角州の成長過程と類似するものである。その堆積様式を重視して古三角州堆積物と呼称したのである。各ベッドの特性は次のとおりである。