温暖な気候であった縄文時代前期、中期のあと後期に入るころから、日本列島は冷涼で不安定な気候にみまわれたと考えられる。気候の冷涼化によって生態系が大きく変わり、人びとの生活にも大きな影響を与えたようである。列島の北辺にある北海道東北部はとくに影響が大きく、縄文時代の後期前葉では、ほとんど遺物がみられず、後期中葉になってようやくわずかの遺物がみられるようになる。
藤本強によれば、とくに根室、釧路で遺物が見られるようになるのは、後期後葉であり、その理由として、藤本は、推測の域を出ないがとことわった上で、縄文時代前期・中期の温暖期には流氷の到来はまだないが、後期前葉になって流氷が到来するようになり、この地方の人たちの生活基盤を根本から変えてしまい、ここに大きな人口の減少が現出したものであろうといっている。