縄文時代前期にいたると、温暖化現象はピークに達し、内陸部に残された貝塚に象徴されるように海がかなり内陸部まで入り込んでいた。この現象を縄文海進と称している。千歳市美々貝塚は、この時代に形成された典型的な貝塚であり、現在の海岸線から一七キロメートルも内陸にあることが知られている。
縄文時代前期の遺跡には、非常に多量の「北海道式石冠」と称される擦石が検出される事が特徴である。擦石の用途は主に木の実、植物の根・茎等を擦り潰し、なかに含まれる澱粉を採取するのに用いられたと考えられる。澱粉を多く含む植物は、広葉樹林帯に多くみられ、針葉樹林帯には少ない。縄文時代前期は比較的温暖な広葉樹林帯を基礎に展開した文化という事ができる。