図-12 縄文中期の石器(S267・268遺跡)
前半期は、全般的に「有茎石鏃(ゆうけいせきぞく)」と「縦形石匙(たてがたせっぴ)」(つまみ付きナイフ状石器)が多く、それに「北海道式石冠」とか「断面楕円形の擦石」を特徴的に伴う。なお、平底押型文土器群の遺跡では「石銛」がやや多く検出され、逆に擦石類が不顕著である。この石器群の様相は、縄文前期の石器群と石鏃の型式上の違いを除けばかなり近似したもので、両者は同一段階とみることもできる。土器型式の変遷においても、少なくとも円筒土器群は下層式から上層式へと密接な関連をもって変化し、また東北地方北部から道南の円筒土器を出土する遺跡では、下層a式から上層d(ないしe、サイベ沢Ⅶ、見晴町式)式期まで切れ目なく同一地に居住している例が多いところから、この期間は両者の文化伝統および生産基盤は、特に大きな変化をみせず推移したということもできる。
一方、後半期に入ると、石器群の様相は一変し、石鏃の出土率が低下し、道央・道東北部では「石銛」と称せられる大型の石鏃ないし石槍が増加する。さらに、いずれの遺跡においても典型的な「縦形石匙」といわれる器種はほとんど検出されず、搔器も全般に低い比率である。そして、石皿とセットになる擦石もほとんど姿を消してしまう。このことは、環境の変化およびそれにともなう動植物相の変化があった可能性を間接的に示しているものと考えられる。