この遺構の用途については、「陥し穴」という意見が多いが、本州ではその対象動物のひとつと推定されているイノシシを捕るには、日本の民俗例の「シシ穴」と比較して土壙の大きさが小さすぎ、また陥し穴であったとしても大きい動物を対象としたのではなく、ネズミ、カエル、昆虫等の小動物に対して利用した可能性を指摘する見方もある。しかし、北海道内に限っていえば溝状遺構が分布する地形とシカの冬期間の「居つき場所」とは類似した環境で、特に人が利用したあと(遺跡)は原生林が伐採され明るい疎林が残り、こういった場所が積雪期において林縁部に集合・移動する習性をもつエゾシカにとって好適な生息地であること、さらに春先の雪深い時期にエゾシカを上流から追うと、シカは川の中を逃げるかまたは谷の斜面の雪の少ない所、すなわち谷の肩に当たる所を等高線に沿って逃げるという事例などを考えると、少なくとも北海道ではこれらの遺構はシカを対象として冬期間にシカの通り道に設けた陥し穴である可能性は高い。