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同業組合の職工・徒弟管理

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 職工・徒弟を使用する事業経営者の同業組合も数多く創設されている。『札幌区統計書』(明45)からは、主な組合として以下のものがひろえる。
  組合名    員数   創設    目的
  印刷業組合    5   明41・ 3  営業の発展、意志の疎通
  染物業組合   20   41・ 5  親睦、斯業の発展
  鉄工業組合   41   41・ 1  徒弟・職工の褒賞
  畳職営業組合  19   41・11  斯業の改善
  左官組合    22   33・ 1  弊害矯正
  石工組合    85   41・ 1  斯業の進歩発達
  鳶職組合    30   40・ 4  同業者間の救済
  菓子商組合   47   36・ 3  親睦、営業の発展、徒弟・職工の奨励
  大工職組合   32   40・ 7  斯業の改善、弊害矯正
 以上の組合は、同業者間の営業上の問題で創設され、組合員も事業経営者に限られ、独立経営の職工を除き徒弟などの加入は認められていなかった。このような組合の性格を反映してか、職工管理についても鉄工業組合菓子商組合などでは徒弟・職工の褒賞、奨励も組合目的とされていたが、特に組合として重視していたのは職工・徒弟の管理であったのである。
 それは(一)職工の移動監視、(二)同盟罷工の防止、(三)風紀の矯正にあったといえる。印刷業組合では(一)については、「組合内(甲)に勤務し居るものにして乙に使雇を申込みたるときは乙は(甲)の承諾を受くるを要す」とし、職工の移動に際しては必ず旧雇主の承諾を必要としている。これは職工の引き抜き・「家出」の防止とともに、自由な移動を認めずに、組合全体で職工を管理しようとするものであったといえる。次に(二)(三)については、組合員は「勤務者を扇動して罷工せしめ及び之を使雇せざること」とし、また「組合内勤務者にして特に解雇すべき者」として、
一、同盟罷工を企図し又は之に雷同加盟したる者。
二、風紀を紊乱し又は同勤者の妨害となるべき所為を為す者。

をあげている(北タイ 明43・1・23)。
 (一)に関しては染物業組合畳職営業組合でもみられ、鉄工業組合では雇用する職工に本籍地、氏名、年齢、現住所、雇主名、等級、給料などを記載した手帳を発行し、「此手帳を所持せざる職工は一切雇入れない定め」とし、(二)(三)に関しても印刷業組合と同様な規約を設けていた。当時は全国各地で職工の同盟罷工がみられるようになっており、組合ではこのような動向を警戒していたことがわかる。
 なお、三十七年十月に印刷業者が職工の一日の就業時間を一〇時間から一一時間へ、休日を月二回から一回へという改正を申し合わせたことがあった。それに対し職工たちは、「大不平を鳴らし同盟罷工をなさん」と労働条件の改悪を抗議する事件もみられていた(北タイ 明37・10・19)。それだけに職工の連帯した運動には、いっそう過敏となり対策を講じていたようである。

写真-8 明治41年の山藤活版所工場(南2西6) 当時40人の職工・徒弟がいた