商店などの雇人・使用人に対する奨励もこの時期は大きな課題となってきていた。これまでの丁稚奉公のような封建的な使用法では、立ち行かなくなっていたのである。
明治三十四年五月に創設された札幌商工業家雇人奨励会は、会員を「満二ヶ年間以上同一主家勤続せる男子」とし、「主家に対し忠勤を尽したる事蹟顕著なる者」を表彰することを目的としていた(道毎日 明34・5・10)。五月十二日に中島遊園にて大会が開かれ、表彰式と園遊会、余興などが行われた。この日三四人が表彰を受けている。同会の趣旨は、「精励多年忠実に主家の益を図りたるものを表旌し因て益々主従思想の美風を養成」することにありとされ(道毎日 明34・5・14)、「主従思想」を強調するあくまでも使用者側の立場に立った恩恵的なものであったが、雇人のことが顧慮されるようになったことは進歩であったと評価できるだろう。
続いて札幌商業会議所では、四十一年七月に商工使用人奨励規定を制定し、勤続年数を三、五、七、一〇年以上の四段階に分け精勤者を表彰することにした。第一回の表彰式は四十二年十一月八日に行われ、あわせて五七三人が表彰されている(北タイ 明42・11・9)。
また、三十六年に札幌商工徒弟誘掖会がつくられ、夜学を設置し、教育事業も開始されている。