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拓北農場の売却問題

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 ところが八年十二月二十六日、農場の有力小作人の一人である西村鷹次郎宛に、札幌区北八条の東政太郎という人物から「今回貴農場を拙者等引受け売却致すべきに付一応貴兄等の意見を承り度く就ては二十六日午後六時頃総代人全部と共に御来宅下されたし」(北タイ 大9・2・14)という内容の葉書が届いた。驚いた農民側は、総代人を選んで東政太郎や農場管理人の佐々木政吉に面会して種々調査した結果、岩崎家では拓北農場の内、初山別、篠路の二支場を釧路の馬産王神八三郎に売却する意向であるらしいことが判明した。憤慨した小作人たちはさらにその「裡面」の調査を進めた結果、①岩崎家は篠路支場を、元拓北農場の場長で東山農事株式会社社長間崎道知、神八三郎の代理人遠藤清一、三菱商事小樽支店長田中丸勘七の三人を介して、釧路の道会議員三井徳宝に「二十余万円」で譲り渡したこと、②三井は札幌郡豊平町字月寒の牧畜業吉田善助に同支場を四六万円で転売することを計画し、岩崎久弥の代理人と吉田との間で売買の登記が行われたこと、③約二〇万円の利益を得た三井は、この売買の関係者にその中から報酬を支払ったこと、などが明らかとなった。