十三年五月末における北海道の定期預金協定利率は三・六六パーセント、農村信用組合の定期的貯金利率は全国でも最高に位置する五・二パーセントであった。大蔵省・農林省の通牒により、金利平準化運動が提起され、道府県ごとに銀行・信用組合を網羅した金融懇談会が結成された(全国金融統制会調査部調査課 戦時下預貯金利率の変化 一)。その結果、他府県には遅れたものの、十四年一月十二日に北海道における金利協定が締結された。銀行の定期預金金利は三・七パーセント、ただし「郡部ノ特殊ノ地域ニアル特定ノ銀行」は三・八パーセントを認める、信用組合聯合会(北聯)は三・七パーセント、ただし当分の間三・九パーセント、農村信用組合は三・九パーセント、ただし「特殊ノ事情アル組合」を例外とする、という内容であった(全国地方銀行協会 全国金利協定成立状況調 昭和十四年一月現在)。
しかし、三・七~三・九パーセントという金利は、低金利政策下では許容されず、十四年以降政府は、地方銀行金利の三・五パーセント以下への引下げといわゆる勉強率(公表金利よりも上乗せする)の廃止を指導した。十四年一月には、道内各銀行本支店を第一種から第三種に分け、第一種~第三種では定期預金金利にして一厘~二厘ずつの差が認められた。第一種には安田、第一、興銀、拓銀、第二種に道銀、北門、函館、十二など、第三種に泰北、商工、殖産が位置づけられた。十四年十一月の小樽における金融懇談会打合せの際に、郡部拓銀支店と道銀支店の一厘差が、預金獲得上拓銀の不利になるとして、拓銀側は道銀を第一種に昇格するよう主張しているが、日銀支店長、道銀側は困難だと判断している(北海道拓殖銀行業務課 昭和十四、十五年度預金利率等協定関係起案綴)。
十五年五月二十日の地方銀行協会第四回総会において、桜内蔵相は「地方金利平準化の運動を起したが……その効果大いに挙り、北海道を除き何れも当初の目標通り年三分五厘以下に引下げられ……」と語り、北海道だけが取り残された形となった(北タイ 昭15・6・6)。六月十七日の道庁主催金融懇談会において、表29のように金利協定が締結された。第三種銀行や信用組合など一部に三・六パーセント以上の金利を残したものの、概ね三・五パーセント以下に平準化されたのである。そして第三種銀行の問題は、銀行合同によって解決されることになる。
表-29 北海道の金利協定 (昭和15年6月14日) |
種別 | 銀行 | 北聯 | 信用組合 |
定期預金 | 一種 市部 3.3% 郡部 3.4% 二種 市部 3.4% 郡部 3.5% 三種 3.6% | 3.6% (当分3.7%) | 市街地 3.6% (例外3.7%) 農村 3.6% (例外3.9%) |
全国金融統制会調査部調査課「戦時下預貯金利率の変化(一)」(全国金融統制会報 昭17.8)より作成。 |