札幌駅前通の北一条通から南四条通までの間は、昭和二十四年(一九四九)に都市計画街路を変更した際、将来の交通量の増加を予想してそれまでの計画幅員二五メートルを三六メートルに変更した。そのため札幌市では二十七年になって街路整備事業を十年計画で開始しようとした。しかし商売が成り立たないとする地主や地元業者から猛烈な反対が起こった(道新 昭27・3・30)。札幌市は道路拡張により削られてせまくなった敷地を有効利用するために共同店舗の構想とその資金斡旋の考えをもって、大通西四丁目(北大通)の関係者一九人と話し合いをはじめた(道新 昭27・5・27)。表通りの業者だけに負担をかけることを避けるため、そのブロックの敷地整理を含めて行う方針であった(道新 昭27・6・18)。
それに対し地元側は、拡幅工事が実施されると残された敷地が一メートル程度しかなくなる業者がでて死活問題であるとして、拡幅するなら二七メートル程度と反対を唱えはじめ(道新 昭31・2・21)、その後道路幅三〇メートルとして歩道はアーケード方式で歩道の上は業者の所有建物とする案(道新 昭32・2・22、4・16など)、アーケード付四階鉄筋の共同店舗を地元負担で建設して道路幅は三二・五メートルとする案(道新 昭32・7・24など)と計画への譲歩をみせながらも、反対活動を続けた。
しかし昭和二〇年代末から三〇年代は、札幌駅前通を中心とする札幌の中心部が、本州企業の進出や既存大企業などの社屋建替えで、高層ビル群が続々とできた時であった(道新 昭29・8・4など、毎年「ビル化」、「高層ビル化」が新聞で報道される)。この動きは北一条~南四条間の駅前通でも同様で、その建替えの際には都市計画街路の路線計画に沿った三六メートル幅に従った建築計画でなければ許可されなかった。拡幅工事が開始される以前から建替えの必要のある業者(例えば三越デパートや拓銀本店など)は、三六メートル幅の計画路線に沿ってその建物を当時の道路面より数メートル下がって建てるようになった(道新 昭35・12・28夕、36・2・18、4・23夕)。そのため駅前通は道路面に沿って凸凹状態となり、札幌の表玄関として不体裁があらわになってきた(道新 昭36・10・21)。
駅前通りの拡幅問題は、三十六年(一九六一)には札幌市が街路幅の再検討する姿勢をみせた(道新 昭36・6・21など)時期もあったが、三十七年になると市街地改造法の適用を受けて拡幅を実施することを表明した(道新 昭37・1・17)。市街地改造法は東京オリンピックの時に道路整備のために三十六年に成立したが、その適用を受けた駅前通りの市街地改造事業は、札幌市が当初もっていた「街路に面した店舗だけをギセイにするのを避けて、裏側の土地、建て物も買収の対象とし、集合店舗ビルを建てて、拡幅の影響をうける全店舗を合理的に収容しよう」という考えで進めるものである(道新 昭37・2・17)。三十七年七月建設省が札幌駅前通拡幅工事を三十八年度から実施したいと三十六メートル案を示してきたため、建設省の予算査定の関係もあり事態が急してきた(道新 昭37・8・16、9・1)。それに対し地元商店街からは衆議院議長と建設大臣宛に三十六メートル案反対の請願を提出するなど、あくまでも反対の態度を示した(道新 昭37・9・2、9・8)。しかし一時業者側を支持した市議会や商工会議所も札幌市の方針に同調し始め、札幌開発建設部の三十八年度の事業計画のなかに札幌駅前通拡幅事業が組み込まれた(道新 昭38・2・6)。
写真-2 駅前通の拡幅計画
写真奥の白い細長のビルは札幌駅。中央部右の白いビルは三越,破線部分は改造施行地区。
(札幌の都市再開発 札幌市 昭57より)
札幌市の地元業者への説得はこの後も時間がかかり、三十八年度末にやっと南二条西三丁目で事業が開始された(道新 昭39・4・5)。札幌駅前通の拡幅事業は市街地改造事業として三十八年度から四十五年度まで表7のように五地区に分けて事業実施された。
表-7 市街地改造事業施行状況 |
地区名 | 施行場所 | ビル名称 | 施行年度 | 事 業 規 模 |
第1地区 | 南2西3 (北側) | 札信丸実ビル | 38~41 | 区域面積 2,800m2 建築規模 地下2,地上9 延 13,534m2 |
第2地区 | 南3西3 (南側) | 川中・川人ビル | 40~43 | 区域面積 840m2 建築規模 地下1,地上5 延 1,226m2 |
第3地区 | 南2西4 (北側) | 中心街ビル | 42~44 | 区域面積 2,000m2 建築規模 地下2,地上8 延 11,021m2 |
第4地区 | 南3西4 (北側) | エイトビル | 44~45 | 区域面積 3,000m2 建築規模 地下2,地上8 延 17,372m2 |
第5地区 | 南3西4 (南側) | シルバービル | 44 | 区域面積 900m2 建築規模 地下1,地上5 延 2,151m2 |
『札幌市政概要』(1972) |