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白石村の場合

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 農地改革以前の白石村では、村内農家の大多数は自小作の混同経営であり、これが農家の中核をなしていた。地主の多くは札幌市在住者であり、明治初期の開村当時の開拓農家の子弟がサラリーマン化して札幌市に移住、あるいは農地を小作地に貸出している事例もあった。これは、白石村の都市近郊農村としての性格を反映したものである。農地買収にあたって困難を極めたのは、基礎となる土地台帳と現地の状況が一致しないことであり、野津幌の殖民区画地の場合は基礎となる原図さえ存在せず、買収を進める上での大きな障害となった。しかし、それにもかかわらず全農地の約六〇パーセントの買収に成功した。
 一方、買収に関する異議申立・訴願等の状況をみると、昭和二十二年度から二十五年度までの間に一三一件の異議申立が受理されたが、四四件が却下、二四件が棄却されている。買収に伴う訴願はこの四年間で一四件受理されたが、一、二の事例を除いていずれも却下・棄却・取下処分となっている。小作調停も皆無である。このような点は、白石村が旧仙台藩士族によって開拓されたという歴史に何等かの関連があるのかもしれない。
 以上札幌市域における農地改革の進行状況を各地域別に見てきたが、最後に農林省農地局農地課が二十五年八月一日現在で調査した「農地等開放実績調査」から、札幌市に関係する部分を示すと表22のようになる。この調査では、札幌市のデータが札幌地区と白石地区とに分かれており、札幌地区の数字がいわば戦前の札幌市の農業実態を示すものといえよう。
表-22 札幌市の農地改革(1)                 (単位:町歩)
市町村名農地面積(昭和20.11.23)農地買収済面積農地所管換面積農地売渡済面積
自作地小作地
札幌市札幌地区683.5536.81,220.31,365.816.31,382.11,362.9
白石地区863.61,472.62,336.2555.4112.0667.4641.7
1,547.12,009.43,556.51,921.2128.32,049.52,004.6
石狩支庁札幌村1,064.81,704.72,769.51,592.2278.31,870.51,869.5
篠路村1,899.5699.52,599.0756.628.9785.5771.9
琴似町1,836.82,165.74,002.51,558.0152.91,710.91,617.7
手稲町1,018.01,018.01,018.04.61,022.6985.0
豊平町2,680.62,725.05,405.61,991.0678.92,669.92,633.7
合計9,028.810,322.319,351.18,837.01,271.910,108.911,887.0

表-22 札幌市の農地改革(2)                 (単位:町歩)
市町村名農地面積(昭和25.8.1)農地を買収された地主の団体農地売渡を受けた戸数  
自作地小作地それ以外*個人地主法人団体
在村不在村在村不在村
札幌市札幌地区2,242.5252.12,494.615532257799
白石地区1,044.1232.21,276.37428076272
3,286.6484.33,770.922960212131,071
石狩支庁札幌村2,726.938.42,765.313012721571
篠路村2,752.226.32,778.58210522386
琴似町3,540.9435.90.83,977.685793716671
手稲町985.062.41,047.42419615555
豊平町2,779.7282.83,062.52365103201,573
合計16,071.31,330.10.817,402.27862,33026674,827
農林省農地局農地課『農地等開放実績調査』(昭和25年8月1日現在)より作成。
*は,原資料では「自作地にも小作地にも入らぬ農地」となっている。