畜産の振興に関わる事業として、まず、戦前以来ずっと継続されて来た、札幌市牛馬籍条例にもとづく牛馬籍との照合検査、および家畜伝染病予防法にもとづく家畜伝染病予防事業という二つの事業がある。後者は、道の事業に札幌市が協力する形で行われ、馬の伝染性貧血病、流行性脳炎、牛の結核・ブルセラ病、豚のコレラ、鶏雛の白り病の予防注射などが実施された。
昭和二十七年、新規の事業として家畜貸付事業がスタートしたが、この事業は本市農業の有畜多角化を図るために、札幌市畜産振興会(各農協を構成員とした)に市有家畜の管理を委託し、各農業協同組合を通じて希望農家に貸付を行うものであり、対象とされた家畜は乳牛・緬羊・豚・鶏であった(昭27事務)。本事業は三十八年まで行われ、その後は事業の名称と内容を変更しつつも継続していく(本事業の実績について、五章八節の表66を参照)。
二十九年、やはり新規の事業として乳牛経済検定組合の育成事業がスタートした。この組合は、乳牛飼育の質を高めること、具体的には搾乳量の大幅な増加を実現することを目的にしていたから、本事業は、家畜貸付事業によって乳牛を保有することになった酪農家に対して、今度は優れた乳牛の飼養方法を普及する狙いがあったといえる。札幌市は、この年に白石町東米里地区に乳牛経済検定組合を組織させ、飼養管理共励会を開催するなどした結果、従来に比べて搾乳量の大幅増加が認められ、経済検定の効果が顕著であったところから、本事業もまた拡充が図られることになった(昭29事務)。