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札幌綜合鉄工団地の形成

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 四章一節で述べたように、戦後復興期の札幌鉄工業界は、炭鉱機械の代金未収などによって苦しい経営を余儀なくされていた。そのなかで中小規模の鉄工業者は三十年十一月、札幌綜合鉄工業協同組合を結成した(道新 昭30・11・6)。このほか札幌鋳物工業協同組合札幌機械工業協同組合があり、これら三組合を中心に札幌鉄工団地期成会がつくられ、土地の選定をはじめていた。三十六年二月に、場所を篠路町に内定したが(道新 昭36・2・9)、札幌市が、候補地は農地に囲まれており工業団地には不適当としたため、他の場所を探すことになった(道新 昭36・2・17)。その後紆余曲折を経て九月には琴似町発寒に決定した(道新 昭36・9・10)。同月、札幌綜合鉄工団地協同組合が設立され、理事長は松宮利市(藤屋鉄工)、副理事長は落合定雄(北日本電極)であった。国と道からの助成金を得て三十七年には本格的造成工事がはじまった。表10は、鉄工団地に移転した工場の一覧である。四十年一月末日で四九の工場が建設された。業種を機械、車輌、鋳物、歯切、鍛造、鉄骨サッシ、製缶、特殊の八部門に分けて、団地内を部門別に配置している。そして共同施設を建設し、共同受注を行い生産能率、品質精度の向上、生産コストの低下をねらっていた(団地の概況)。

写真-2 鉄工団地全景

表-10 札幌綜合鉄工団地協同組合一覧(昭和40年1月末日現在)
企業名資本金従業員数業種
<昭和37年度>万円
向後鉄工(株)25045鉄骨サッシ
大東建設(株)50077鉄骨サッシ
日詰配管工業(株)1,00086鋳物
(株)多田鉄工所30016製缶
(限)森機械製作所80027機械
藤屋鉄工(株)50060機械
豊平製鋼(株)23,000396機械
<昭和38年度>
(株)岩城プレス工場20026鉄骨サッシ
和光電化工業(株)50015メッキ一般
協和機械製作所10015機械
(株)共栄産業車輌機械製作所20025車輌
(株)茶臼山鉄工所40026鉄骨サッシ
(株)興亜電機製作所5039機械
札幌電鉄工業(株)40041湿室亜鉛メッキ
三和鉄工(株)65026歯切
(株)中道機械製作所10044機械
内外建設工業(株)3,360205鉄骨サッシ
丸吉鉄工(株)450112鉄骨サッシ
(株)丸孝鉄工所15049鉄骨サッシ
(株)佐藤商店80048シャーリ機械整備
北海道技研工業(株)50063鉄骨サッシ
和田産業(株)25010鉄骨サッシ
<昭和39年度>
荒川鉄工(株)25072鉄骨サッシ
(限)井ノ内製作所504ストーブ
(株)池田歯車製作所2,00023歯切
(株)いわしや森田器械店40019医療器具
北日本電極製造(株)1,30040溶接棒
(株)工成舎40029製缶
札幌高級鋳物(株)1,00024鋳物
(株)中道鋳物工場5011鋳物
苗穂工業(株)20034車輌
(株)樋口鉄工所50077ステンレス加工
富士波工業(株)20097建築金物
北愛琺瑯工業(株)800143家庭金物
北興化工機(株)25025機械
宮坂金属鋼業(株)5,000103仲鉄
(株)米久製作所10017機械
札幌鋳物工業(限)25023鋳物
(株)富士機械工業所35029機械
土田工機(株)500162鉄骨サッシ
伊藤製缶工業(株)10034製缶
東新工業(株)1,20062機械
藤商事(株)20021機械
<昭和40年度>
岡本興業(株)25013機械
札幌鍛造(株)20018鍛造
弓野産業機械(株)40042機械
(株)豊平鉄工所5025機械
細井鉄工所1008鋳物
田中製作所2005歯切
札幌綜合鉄工団地協同組合『団地の概況(昭40年6月)』

 ところが、四十年半ばには経営不振から倒産の危機に瀕する工場もあらわれた。工場の移転がスムーズに進んだのも、四十年度までに移転を済ませなければ国の助成対象からはずされるという事情もあった(道新 昭40・6・23)。また、鉄工団地協同組合に対し札幌市がマンホールのふたなど発注しただけで、道その他の官庁からの発注はなかった(道新 昭40・7・7)。共同施設建設用に道が交付した助成金は、組合員企業の運転資金に流用されており、そのため共同施設建設はできなかったのである。道は九月に目的外流用による貸付金の早期償還命令を出した(道新 昭40・9・30)。札幌市商工部は、同団地の二八工場に関する企業診断の結果をまとめた。これによると将来とも大丈夫なものは二、現在は不安定だが将来性はあるものが一二、今はよいが借金返済期に苦しくなるものが七、だという。しかし、協同組合の努力で受注は上向きとなり見通しはあるという(道新 昭40・10・11)。そして十二月には機械需要の好転、札幌市による給食施設、建設工事の発注の増、商工組合中央金庫、中小企業金融公庫からの長期運転資金融資の内定などにより経営は好転したようである(道新 昭40・12・3)。
 なお、鉄工団地建設の過程で、小規模メーカーを中心に北海道機械工業協同組合(理事長中静修治)が結成され、独自に丘珠の農地を買収・転用し丘珠鉄工団地を建設した(道新 昭36・5・25)。発寒の鉄工団地よりやや遅れて四十年から本格工事、移転がはじまり、四工場が操業しており、最終的に二九工場が予定されている。共同事業としては丘珠鉄工会館を建て宿舎、職業訓練所に用い共同求人も行っている(道新 昭40・3・21)。