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ビル・ラッシュ

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 昭和三十年頃から、札幌では「ビルラッシュ」という言葉がしばしば使われるようになる。市内中心部に続々とビルディングが建ちはじめ、街の様相が年々変化するようになったのである。図2は、昭和三十三年度と四十年度の全戸地図をもとに作成した駅前通り周辺のビルの配置図である。北からみていくと、6の五番舘は、レンガ造りの建物が老朽化したので、建て替えを決定、三十一年に地上六階建ての仮店舗を道庁正門前に建て(15の建物)、三十三年秋に6の新築が完成見込みであった(道新 昭31・1・13、31・2・24夕、33・10・11)。3の北海道銀行駅前支店、9の第一生命ビル、27の東邦生命ビル、30の三和銀行は、すでに三十年末までに存在している(道新 昭31・1・13)。このころは、ビルの階を増やす増築が行われ、25の札幌市役所、26のグランドホテル、9の第一生命ビルは増築予定が報じられている(道新 昭31・4・10)。その後第一生命は三階分上乗せして地上九階建てとなり(道新 昭32・2・9)、東邦生命ビルは一階上乗せして七階建てになっている(道新 昭33・2・18)。

図-2 駅前通りのビル

 ビル化の一つのタイプは、旧来の商家が共同でビル化するもので、38のSKビルが、その第一号だという。もともといた写真店と理髪店が共同して地下一階、地上五階のビルを建てた(道新 昭32・8・31)。
 その後、新築ビルはますます高層化する。10の日本生命ビルは、三十七年に地下二階、地上九階建て、総工費一六億円で完成した(道新 昭37・9・14)。同年、17の北海道ビルが地下二階、地上九階建てで完成した(道新 昭38・4・22)。これらのビルは、当初から貸しビルとして建てられたものである。
 貸しビル業者が二十九年に結成した札幌ビルヂング協会には、すでに三十三年末時点で一五のビルが加盟している(道新 昭33・12・5)。図2中のビルで四十年時点で札幌ビルヂング協会に加盟しているものは、札幌商工会議所ビル、東邦生命ビル、大同生命ビル、第一生命ビル、北海道ビル、三井ビル、越山ビル、日興証券ビル、秋田銀行ビル、日本生命ビル、雪印スノー会館、大和銀行ビル、伊藤ビル、第百生命ビルの一四である(札幌ビルヂング協会 四十年史)。また、札幌市全域について、札幌ビルヂング協会の新規加盟数をみると、昭和三十年代五六、四十年代三一であった。三十年代の方が多いことは注目すべきである(札幌ビルヂング協会 四十年史)。
 その後のビル建設については、詳述することは不可能なので、越山司(札幌ビルヂング協会副会長)の分析を紹介することにしよう。越山によると表15のように、この時期には本州系企業札幌系企業とではビルの立地場所が異なっている。すなわち本州系企業はまず駅前通りを選び(五八・三パーセント)、次いで南一条以南、大通となるのに対し、札幌系企業は中心部について地域的偏りがなく、南一条以南、駅前通り東、大通という順となっている。これは、本州系企業が場所を選定した上でビルを新規に建設するのに対し、札幌系企業の場合は、旧来の会社、店舗の現地建て替え(ビル化)が多いからだろう。図2は本州系企業が札幌に進出する様をあらわしていたわけである。
表-15 貸しビルの建築場所(単位:m2)
地域本州系企業札幌系企業
駅前通り123,21240,411
駅前通り東13,08464,422
駅前通り西12,70632,006
大通公園27,21552,320
南1条通り3,64737,833
南1条以南28,69769,664
西11丁目近辺2,8483,683
バスセンター近辺4,297
札幌駅北口近辺1,610
211,409306,246
越山司「札幌オフィスビル年代記」(社団法人札幌ビルヂング協会『四十年史』平成7年,所収)
現存する調査対象418棟のうち昭和29~45年までに札幌ビルヂング協会に加盟したものの数値。