観光みやげ品といえば、戦前は木彫りのクマが北海道土産の代表格として定着していたが、戦後は北海道観光物産協会(昭23)、札幌工芸協会(昭25・10)、札幌デザイン協会(昭25・11)、札幌物産協会(昭27・9)が設立され、刺繍・竹細工・リネン・ホームスパン・陶芸・銘菓・水産加工品等、新しい札幌名物が開発された(道新 昭27・4・10、32・5・19)。札観協は、優良みやげ品に推薦票をつけ(昭34)、札幌商工会議所は観光民芸品の展示即売会を開くなどして(昭35)、みやげ品の品質の向上をはかった。道観連でも良心的な店に推奨店の表示を設け(昭41)、四十三年から札幌観光民芸品新作展を開いている(タイムス 昭44・4・18)。このため道産みやげ品は、各地で行われる観光物産展でも高い売上げを示したが、三十年代後半になると、法外な値段・誇大包装・粗悪品への苦情が相次ぐようになった。その後も北海道百年記念事業や冬季五輪を当て込んで不良みやげ品が横行したために、公正取引委員会札幌事務所は、四十三年から摘発に乗り出した。
一方、旅館サービスに対する苦情も後を絶たなかった。札観協によるサービス講習会は、戦前から行われていたが、二十三年七月三十日から七日間、第一回旅館従業員サービス講習会が開かれた。道博の際には新たに店員の接客サービス講習会が開かれ、旅館・商店・料飲関係者のためのサービス手帳も発行された(道新 昭33・6・9)。
三十五年五月九日から三日間、第一回観光サービス教室が開催された。これは観光とサービスを結びつけた初めての講習会であり、旅館の女性従業員・バスガイド・デパート店員・PR係員等約二〇〇人が参加している。
四十年代に入ると、道観連・道バス協会等の主催による冬季観光大学講座や(昭40・3)、札観協・タイムス観光主催による観光教養大学等(昭40・10、41・3)、関係業者の指導者や経営者を対象とした講習会が企画されるが、サービスに対する認識を、より広く普及・浸透させることがねらいだったと思われる。
四十四年四月、市商工部観光課から『観光サービス手帳』が発行されている。巻頭には「札幌に対する印象は必ずしも良いとはいえず、その筆頭にあげられているのが接遇の問題」であるとし、「これらの問題を積極的に取り上げ、その指導改善に努力し」、「観光関係者の接遇資料として役立て」ることを目的に作られたと記されている。
みやげ品に関する苦情や接客サービスの問題は、一年をとおして均衡のとれた観光を振興する、すなわち「観光の通年化」とも関わっていただけに(次項参照)、北海道観光全体の課題でもあった。