札幌は開拓使の本府、北海道庁の所在地―道都として都市形成がなされ、政治的な中枢管理機能を中心とした都市性格をつよくもっていた。さらに、戦時期の経済・団体統制によって札幌への集中化が推進され、戦災を受けずに都市機能が保たれていたことから戦後も企業が集まり、新たに北海道開発庁などの設置が金融機関・企業の進出を促進し、経済的な中枢管理機能も拡大していった。それらのことが札幌市の都市開発をいっそう進めて「リトル・トウキョウ」とし、持続的な好況が人口を集積化していくことになった。
この結果、道都である札幌には北海道の政治、経済、さらには文化の面にわたる中枢管理機能が集中しており、札幌は典型的な一極集中型の中枢管理都市となっていた。このことは逆に、全道的にみれば札幌への一極集中による弊害も発生している。
また札幌は、都市の成立から約一〇〇年間で人口一〇〇万人、約一三〇年間で一八〇万人を集めた、驚異的な成長都市である。しかも世界的にみても、札幌のような寒冷積雪地域での大都市はまれである。
札幌の都市形成、都市機能、都市性格などについては、歴史的にも現在的にも色々と考えるべき問題は多々ある。そうしたことを基本的に考えるべき時点となってきたのが、現代であるといえる。その嚆矢(こうし)となったのが、北海道大学ミックス研究会『成長都市―その特性分析―』であった。同書は都市空間、交通体系、環境問題、経済、財政など七本の論文からなり、「共通の分析視角は、都市問題との関連で札幌市の都市空間、社会、経済に関する特異性を他の大都市ないし、全国、地方とのからみで明らかにすること」であり(同書「はしがき」)、札幌市が成長都市といわれる特性は何かを分析するものであった。
続いて五十八年七月に発足した札幌都市研究センターは、設立の趣旨・目的を、
○市民的立場に立った都市問題研究機関をめざすこと。
○札幌のいろいろな問題についても調査し、考え、研究すること。
○北海道のなかの札幌について、調査し、研究すること。
以上の三点とする(札幌都市研究第一号 編集後記)、市民的立場から自由に札幌の都市問題を考究する団体であり、機関誌の『札幌都市研究』を発刊していた(平成十四年度まで九号発刊)。同誌の特集タイトルには、「五大都市サッポロはいま」、「北の巨大都市とその周辺」、「膨張都市と市民生活」、「政令都市さっぽろの課題」、「〝検証〟道都さっぽろの課題」などがあり(以上、第一~五号)、以上を通覧するだけでも、広い立場で札幌についての研究に取り組んでいる同センターの姿勢がうかがわれる。
近年では蝦名賢造(えびなけんぞう)が『札幌市の都市形成と一極集中』を著し都市形成史、一極集中化問題、都市性格、文化的個性など広い範囲から論述し、札幌の都市研究を深化させている。
以上のような動向であるが、札幌の都市研究はすぐれた学問的課題であり、多種の学際研究のテーマであると共に、重要な都市住民の問題でもある。市民が自分の立つ場をみつめ、住む都市の未来を考えることでもある。札幌の過去、現在、未来を考える場の拡がりと、市民ネットワークの形成と活発化を期待したい。