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下水道の拡充

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 前時代に引き続き昭和五十五年度の下水道普及率一〇〇パーセントを目指した。そして四十六年からはじまる五年計画以来、現在まで八回の五年計画により下水道の整備を実行した。この期間は六十年頃をさかいに二期に分けて考えることができる。前期は、下水道の普及を将来市街地(市街化区域)で一〇〇パーセントをめざした時期で下水道設備と水洗化の促進を中心とする。後期は、普及率は九〇パーセントを超えたが、都市化の進行で都市型水害発生などへの対処するため水道設備の増強・改善を進めた。
 公共下水道の整備には膨大な財源を必要としたが、四十五年下水道受益者負担金制度の導入により、札幌市財政の負担を軽減することが出来た(概要 昭47)。四十六年には厚別処理場の建設着手、四十七年度には茨戸処理区の幹線下水道の布設に着手、四十八年度には厚別処理場の運転開始と茨戸処理場の建設着手、四十九年度には手稲処理場の建設に着手した。五十一年八月には茨戸処理場、五十三年六月には手稲処理場が運転を開始した。五十七年度から札幌市の下水道事業は、企業会計を導入した。五十八年度から下水処理後の汚泥を焼却する手稲汚泥焼却センターの運転を開始した。また財団法人札幌市下水道資源公社を設立して、汚泥の資源化を図った。五十九年度末には下水道普及率が九一パーセントに達した(概要 昭61)。
 五十六年八月二度の大雨がおそったが、札幌は思わぬ大水害となった。これは、従来地面へ浸透していた分の雨水も宅地化や道路の舗装により下水道に流れ込み、その水量を下水道が処理しきれなくなってマンホールなどから水が吹き出すという現象などを生んだ。それまで想定していた一時間雨量三〇ミリメートルを超え、物理的に限界を超えていたためという理由もあったが、都市化の進展がうんだ災害でもあった(道新 昭56・8・5、6)。
 それまでの五年計画や事業報告などでは、都市化による雨汚水増大への対処のため、既設下水道を拡充するというように、下水処理能力の拡充整備を主に考えていた(札幌市 札幌市5年計画 ―新長期総合計画推進のために―(昭和51~55年度) 昭52・2、同 札幌市の下水道 昭和55年度版 など)。それに対し五十九年度からはじまった五年計画では、都市化の進展に伴う雨水・汚水量の増加への対応と浸水の防止を図るため、既設下水道の拡充などをすすめる一方で、雨に強い下水道を目指す必要があることを課題とし、雨水流出抑制型下水道の調査・研究を進めるという計画事業を示した(新札幌市長期総合計画 第2次5年計画(昭和55~59年度)昭55・3、札幌市下水道局 札幌市の下水道 昭和59年度版)。そして六十年以降は、雨に強い下水道の実現を目指し、下水道の雨水拡充整備、抑制型下水道の調査・研究のための浸水対策事業を進めた。この事業をアクアレインボー計画と呼び、雨に強い二一世紀の下水道づくりを目指すことにした(概要 昭61)。
 六十三年にはじまる第三次長期総合計画では、それまでの五年確率降雨に対応していた都心部の施設を一〇年確率降雨に対応できる施設に整備することにした。このような既設管渠、ポンプ場、処理場の増強などに加え、アクアレインボー計画に基づき、雨水浸透ますや雨水貯留施設などを備えた雨水流出抑制型下水道の整備に努めることになった。水害防止のため、大量に降った雨水を一時的に滞水させたり、地中へ浸透させて、一時に河川や下水道に流れ込まないようにして、浸水を防止しようというものである。
 六十二年度末の下水道普及率は九三・四パーセントとなり、さらに市街地での一〇〇パーセントを目指すが、これ以降は、市街化調整区域の集落への整備も進めることになった。さらに雨天時や融雪時に処理場から放流する水質の向上を目指し、雨水滞水地の建設や合流式下水道の改善を図るなど、処理レベルの高度化を進めることになった(第3次札幌市長期総合計画 昭63・3)。茨戸処理場の雨水滞水地(平3運転開始)、北二六条から創成川処理場までの地下に内径五メートルの大下水管を埋設して雨天時や融雪時の貯留管とする創成川雨水貯留管(平9運転開始)の整備が行われた(札幌市下水道局 さっぽろの下水道 平14・6、同 札幌市の下水道 平成15年度)。
 平成十四年(二〇〇二)度末の下水道普及率は九九・四パーセントとなり、水洗化率も九九・五パーセントとなった(統計書 平15)。十五年現在、下水道未整備地区の解消や汚水量増加などに対応して施設の増強を行う普及促進事業、老朽施設への対応や汚泥処理の効率化を図る改築・更新・再構築事業、雨に強いまちづくりを目指し、幹線管路や浸透式下水道を整備する浸水対策事業、管路のネットワーク化や二条化によりライフラインの確保を図る地震対策事業を進めている(概要 平15)。昭和四十七年以降に整備された処理場は、茨戸処理場(昭52・8運転開始)、手稲処理場(昭53・6)、拓北処理場(昭59・9)、その他に一七カ所のポンプ場、汚泥処理施設四カ所、下水道科学館(創成川処理場敷地内、平9・5開館)がある(前出 さっぽろの下水道 平14・6、前出 札幌市の下水道 平成15年度)。