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大規模工場の市外移転

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 昭和四十七年時点において、札幌には従業員数一〇〇人以上の工場は七二を数えた。これらの工場が、その後どのようになったのかを追跡すると、表14のように、少なくとも一二の工場は市外に移転している。業種構成をみると、大手資本の食料品、大面積を要する紙・パルプ、そして重化学工業である。移転元の住所は、苗穂駅前および創成川東側地区がサッポロビール、伊藤組木材、中山機械、日本酪農機械と四工場あり、サッポロビール第一工場がサッポロファクトリーとして再生されたように、伝統的な札幌の工場地帯は変貌を遂げていったのである。なお、移転先は石狩湾新港、恵庭、広島がそれぞれ三工場で主たる移転先となっていた。
表-14 工場の市外移転
業種 工場名 住所
(昭47年時点)
移転先 出所
食料品 サッポロビール第1工場 中、北2東4 恵庭市戸磯 『総覧』平3
森永製菓 西、琴似町 恵庭市戸磯 『総覧』平3
雪印アンデス食品 東、苗穂町 早来町 道新 昭60.9.5
木材・木製品 伊藤組木材 中、北3東8 石狩湾新港 道新 平3.7.18
紙・パルプ トーモク札幌工場 西、手稲稲穂 石狩湾新港 道新 平6.1.5、平7.7.8
聯合紙器(レンゴー)札幌工場 白、本通 恵庭市 道新 平11.5.26
化学 北海三共 豊、豊平 北広島市北の里 北海三共(株)ホームページ
金属製品 巴組鉄工所札幌支店 西、手稲西野 広島町大曲 『総覧』平3
土田工機 東、北20東1 石狩湾新港 『総覧』昭58
一般機械器具 中山機械 中、北2東13 広島町共栄 『総覧』平3
日本酪農機械 中、北2東15 江別市工栄町 『総覧』平3
スター農機 豊、豊平 千歳市上長都 『総覧』昭58
1 昭和47年時点で従業員数100人以上の工場。
2 出所は『総覧』…北海道商工観光部『北海道工場総覧』各年

 平成八年の新聞記事は「〝脱札幌〟進む工場 一〇年で市外へ二〇〇社」との見出しで、工場の札幌市外移転の様子を報じている。札幌市経済局工業課の調査によると、市内の工場、研究施設は昭和六十三年の二四五六をピークに減り続け、平成七年には二一二七になったという。工業課では減少した工場の大半は市外への移転とみている。一方、昭和六十二年度から平成八年度の一〇年間に操業を始めた工場のうち、札幌からの移転を調べたところ、小樽市では八九のうち五五、北広島市では四五のうち二三、恵庭市では五三のうち一四、江別市では三一のうち一二であった。表14にもある段ボールメーカーのレンゴーは「宅地化が進む札幌は地価が高く、まとまった土地が確保しづらい」と説明している。他方、市外に移転しても「札幌工場」を名乗り続けるケースが多く、北広島市では「移転工場の八割以上が札幌工場」だという(道新 平8・11・5)。工業という分野からみるならば、石狩湾新港や恵庭、北広島、江別などを含んだ札幌圏という視点がますます重要になってきているといえるだろう。