表15は、中道機械の製品、レンタルの売上高である。四十九年から同社ではバブル期のピークとなる平成四年まで販売高は約五倍化した。豊平製鋼は同期間に売上高を約一・六倍化させていたので、中道機械の成長ぶりは明らかだろう。この間の内訳は、建設機械が大きく比率を下げ、代わって部品売上・修理・整備収入やレンタル収入が伸びてきている。バブル崩壊後の第47期(平7・1・21~8・1・20)には前期比で売上高・経常利益が減少し「土木建設汎用機械が、そのレンタル志向が一段と進み販売で大幅な減少となりました。建設関連プラントも大型物件が少なく減少となり、特に北海道地区における骨材プラント・生コンプラントの大幅な減少は建設機械営業部および製作事業部の営業・製作両部門の業績に大きく影響いたしました」(中道機械株式会社 有価証券報告書 第47期、平8)と説明している。
表-15 中道機械の販売高 | (単位:千円、%) |
昭49 | 53 | 60 | 平2 | 7 | 9 | |
販売高 (千円) <内訳> | 6,311,630 | 10,195,738 | 11,295,342 | 30,159,551 | 28,365,181 | 26,258,641 |
建設機械 | 51.4 | 60.0 | 36.2 | 40.1 | 36.9 | 28.8 |
建築設備機械器具 | 3.6 | 7.5 | 1.5 | 1.9 | ― | ― |
各種プラント | 21.4 | 14.1 | 9.8 | 14.7 | 11.7 | 13.1 |
環境改善・体育施設 | 10.2 | 3.9 | 2.2 | 5.2 | 9.3 | 10.9 |
各種工場・倉庫 | 5.6 | 5.5 | 11.7 | 9.9 | ― | ― |
部品売上・修理・整備収入 | ― | ― | 13.0 | 13.2 | 14.8 | 17.0 |
レンタル収入 | ― | ― | 12.0 | 8.2 | 13.3 | 17.5 |
立体駐車場 | ― | ― | ― | 3.6 | 1.6 | 0.6 |
食品関連施設 | ― | ― | ― | ― | 1.6 | 3.9 |
その他 | 7.7 | 8.9 | 13.5 | 3.3 | 10.8 | 8.2 |
中道機械株式会社『有価証券報告書』各期 1 「各種プラント」は原資料では昭62年から「建設関連業界用各種プラント」、平8から「骨材生コン等プラント」 2 「レンタル収入」は原資料では平1年から「賃貸機械」、2年から「賃貸収入」 |
このように、北海道における機械・金属工業は、建設需要に大きく依存し、公共事業の増減に影響を受けるという性格をもっていた。そこで、こうした弱点を克服する試みもなされたが、その一つが自動車産業の誘致である。苫東に進出したいすゞ自動車工場が昭和五十九年五月から操業を開始した。これに対して、北海道機械工業会は、五十七年からいすゞ小委員会を設け、道内企業の下請参入の可能性を研究していた。札幌の企業が下請となった事例として、まず五十八年に松田研磨所が超硬切削工具の研磨、補修で参入し(道新 昭58・6・14)、平成二年にはマンホールの蓋やフェンスが主製品である渡辺鋳工所(札幌市)がエンジンと車体をつなぐ鋳鉄製ブラケットで認められた(道新 平2・2・24)。
平成二年二月にトヨタ自動車が苫小牧進出を表明すると、業界はふたたび活気づいた。北海道機械工業会は自動車部会を設けることになり、札幌からは二九社が参加するという(道新 平3・6・29)。しかし、十一年時点の新聞報道によると下請となった道内企業は一一社にとどまり、札幌の企業は皆無であった。もっとも、資材納入、メンテナンスなどを含めると道内企業は一〇〇社近くに達するという(道新 平11・6・24)。いすゞ、トヨタの定着により、北海道・札幌の機械工業に新たな課題が投げかけられたといえよう。公共事業依存を脱却する試みの二つ目として、札幌に本社をかまえる機械工業関係企業による新製品開発の動向を表16によりみてみよう。製品は、暖房・除雪など寒冷地特有の技術や環境・省エネルギーなど時代の要請に応えた技術が多いことが特徴であろう。
表-16 機械工業関係の新製品開発 |
年 | 企業名 | 新製品概要 | 出所 |
昭57 | 伊藤製缶工業 | ホタテ貝の殼あけ装置「スチーマー」 | 北の技術'85 |
中静鉄工所 | 電動式コンクリート床定規摺り機「フロアメイト」 | 北の技術'85 | |
昭58 | サークル鉄工 | 自動苗選別装置 | 北の技術'85 |
札幌高級鋳物 | 給排水ポンプ用インペラー(羽根車) | 北の技術'85 | |
日本除雪機製作所 | 自動速度制御装置付きロータリー除雪車 | 北の技術'85 | |
ほくさん | 独自開発製法(スピン法)による太陽電池 | 北の技術'85 | |
中央ネームプレート製作所 | プリント基板 | 北の技術'85 | |
中部電化工業 | 真空装置を使ったデンプン製造システム | 道新 昭58. 8. 3 | |
昭59 | 池田暖房工業 | ディーゼルエンジンを使った新型暖房機 | 道新 昭59. 9.19 |
昭60 | 内外建設工業 | 世界最小の坑道追い切り・拡大機 | 道新 昭60. 5. 8 |
平 2 | 三英鋼業 | 低品位炭とおがくずから固形燃料を作る装置 | 道新 平 2. 2. 7 |
新日本コア | 生物参加方式の水質浄化装置 | 道新 平 2. 4.14 | |
平 3 | 釧路製作所 | I桁(橋桁)仮組立装置 | 道新 平 3. 8.13 |
早坂理工他 | 鋳型砂自動測定装置 | 道新 平 3. 9.21 | |
平 5 | 札幌ボデー工業 | トイレ付き安全標識車 | 道新 平10. 2.17 |
平 7 | 北海道機械開発他 | 真空吸引圧送装置付き浚渫機 | 道新 平 7.12.14 |
平 8 | 新日本技研 | 融雪槽付き自走式融雪車 | 道新 平 8. 1.13 |
親星コスモ | 車載型融雪機 | 道新 平 8. 3. 1 | |
新日本技研 | 発電効率80%発電機 | 道新 平 8. 8. 3 | |
マルキンサトー | ビニールハウスの温度監視装置「み・ハール」 | 道新 平 8. 8. 9 | |
平 9 | 産鋼スチール、北電総研 | 簡易型瓶キャップ締付機 | 道新 平 9. 1.17 |
北砕工業 | 無人削岩機「クリフスパイダー」 | 道新 平 9. 8.13 | |
平10 | サッポロ産機 | FRP (繊維強化プラスティック)製コンテナ | 道新 平10. 2.25 |
玉造 | 濁水連続処理機「タマツ・クリーン」 | 道新 平10. 6.10 | |
サッポロ産機、北電総研 | FRP製サッシ | 道新 平10. 7.14 | |
北海工営 | 高さ調整機能付きスチール製くい | 道新 平10. 8.23 | |
猪子産業 | 焼却炉用ダイオキシン除去装置 | 道新 平10.10.24 | |
平11 | サッポロ産機 | 電柱用FRP製継注 | 道新 平11. 3. 7 |
幸洋 | 排ガス浄化機能付きエアフィルター用シート | 道新 平11.10. 5 | |
寿産業 | ワイヤ除去機能付きタイヤ破砕システム | 道新 平11.11. 3 | |
平12 | 大仁(だいと) | ガソリンスタンド向け融雪機 | 道新 平12. 2.11 |
親星コスモ | 小型車載型融雪機 | 道新 平12. 3. 4 |
1 機械工業分野における新製品開発の事実を、年次が特定できるものについてまとめた。年次は、製造に成功、商品化を開始、量産を開始など記事により異なる。 2 北の技術'85は札幌商工会議所『北の技術'85』昭60。 |