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季節労働者問題

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 表23に札幌市における季節労働者数をまとめた。昭和五十六年から実人数は減少傾向を続け平成十二年には三万三〇〇〇人程度となる。札幌の就業者数は一貫して増えるので、就業者にしめる季節労働者の比率は低下した。ところが、全道の季節労働者数は札幌よりも大きく減少したので、全道の季節労働者にしめる札幌の比率は年々上昇したのである。人数は減っているものの季節労働者が札幌に集中する傾向が見いだせるのである。市史5上において、こうした季節労働者の存在が、失業保険給付の季節変動となってあらわれ、冬季に給付人数が増え、夏季に減るという循環を繰り返していることを明らかにした。こうした傾向が本巻で扱う時期にはどのようになったのだろうか。
表-23 季節労働者数(札幌市)(単位:人、%)
昭565758596061平1231112
①就業者数(札幌市)631,814631,814631,814631,814631,814694,891694,891694,891784,625845,813845,813
季節労働者数(札幌市)45,18145,88445,58843,87043,22142,87639,72538,03436,99833,72232,861
③出稼労働者数(札幌市)2,7382,7082,6392,7833,1993,3201,9912,3002,2232,1182,628
季節労働者数(全道)295,978293,444283,748271,995267,369260,932233,240224,935220,570186,350177,531
季節労働者比率②/①(%)7.27.37.26.96.86.25.75.54.74.03.9
季節労働者比率②/④(%)15.315.616.116.116.216.417.016.916.818.118.5
北海道労働部職業対策課(商工労働観光部職業対策課、労働局職業安定部職業対策課)『季節労働者の推移と現況』各年度
1 就業者数は昭55、昭60、平2、平7国勢調査。

 図5は雇用保険受給者の推移を示している。雇用保険には一般雇用保険と短期雇用特例とがあり、季節労働者は短期雇用特例が適用されていた。まず、一般雇用保険は、景気変動に影響を受け、バブル経済期に減少し、バブル崩壊後に増加していること、季節的な変動はないことがわかる。これに対して短期雇用特例は、一月をピークとした季節変動が激しく、ピーク時の人数は一般雇用保険受給者を軽く上回り、三万人から二万人台で推移している。夏季に働き、冬季は失業して雇用保険を受けるという季節労働者のパターンは、バブル経済以降においても変わらなかったのである。年間の雇用保険金額をみると、一般雇用保険は不況期の昭和五十八、五十九年には二〇〇億円を超えるものの好況期の六十三年から平成二年には一一〇億円前後で推移する、というように景気変動の影響を強く受けている。ところが短期雇用特例保険金額は、五十年代以降ほぼすべての年次で一一〇億円台から一三〇億円台の間で推移している。

図-5 雇用保険受給者

札幌地下鉄東西線の西一八丁目駅から南へ、寒風に身をさらしながら人の列が黙々と続く。道内就業者の三分の一を抱える札幌公共職業安定所に、年明けから雇用保険の受給者が押しかけている。転職先を探す若者や、一般失業者にまじって冬季間、仕事から締め出された季節労働者が日参するためである
(道新 昭62・1・21)。

 この記事にある「他地区から札幌圏に回ってくる移管扱いは昨年四月から年末まで六百件を超し、一昨年より二割近く増えている」という札幌公共職業安定所長の指摘や「札幌の消費景気が底堅いのは、雇用保険金が下支えしてくれるのも一因」というデパート関係者の証言は、雇用保険のあり方と札幌一極集中の関連を示唆しておりたいへん興味深い。