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女性労働者の増加と勤労者の多様化

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 昭和二十五年(一九五〇)当時、二四・五パーセントに過ぎなかった札幌市の雇用労働者に占める女性の割合も、高度成長期に入り官公営事業所・公務を除く第三次産業や一部製造業で漸増し、四十五年には全体の三二パーセントとなった(市史5上 七章)。その後も男性若年層の道外への流出、女性若年層を中心に道内他市町村からの流入、既婚者のパートタイマー労働者の労働力代替などにより女性の職場進出が進み(市政概要 昭53)、五十五年には全体の三分の一を超えた(表23)。この間の四十八、九年の道内企業対象の「勤労婦人労働実態調査」によれば、女子労働者の採用理由(複数回答)として「女子でなければ出来ない仕事だから」をあげた事業所が、製造業七六・九パーセント、金融・保険業八四・一パーセント、卸売・小売業八七・七パーセントと最も多いが、金融業で一四・三パーセント、製造業二四・五パーセント、卸売・小売業で三一・九パーセントが「男子にくらべ賃金が安いから」をあげている。また、労働者側の就業理由(複数回答)は、未婚者では「自分の小遣いにする」が六一・一パーセントで最も多く、以下「旅行・レジャー等のため」四二・六パーセント、「家にこもっていたくない」三九・七パーセントなどに対し、既婚者は「生活費の足しにする」が五六・一パーセント、「家にこもっていたくない」が三五・三パーセントで、以下、住宅新改築や土地購入、子供の学費、生活を支える、老後のためなどが目立つ。さらに「勤務継続の意志」については、未婚者の四五・七パーセントが「結婚出産まで」、既婚者(離別・死別を含む)の四三・九パーセントが「今の仕事を続けたい」と回答した(北海道労働部 勤労婦人労働実態調査報告書)。
表-23 札幌市の男女別雇用者数及び割合の推移
  種別
年次
就業者の総数雇用者の総数雇用者男女別人員雇用者男女別割合(%)
昭25111,36484,49463,82520,66975.524.5
 45474,653375,598255,351120,24768.032.0
 50560,949447,652304,508143,14467.832.2
 55631,814504,045333,362170,68266.133.9
 60694,891567,496360,661206,82563.636.4
平 2784,625646,887393,994252,89360.939.1
  7845,813701,395414,141288,25259.041.0
 12851,060714,198409,140305,05857.342.7
『国勢調査報告書』(10月1日現在)より作成。昭和25年7月白石村、同30年3月札幌村・篠路村・琴似町、同36年5月豊平町、同42年3月手稲町を合併。

 六十年五月、男女雇用機会均等法が成立(昭61・4施行)したが、六十二年における札幌市の男女別雇用形態は表24のようであった。調査方法が国勢調査とは異なるが、雇用労働者総数に占める女性の割合は全体で三五・九パーセント、絶対数の多い第三次産業で三九・五パーセント、第二次産業では二三・二パーセントにあたる。しかし、雇用形態別では雇用者総数の二〇・四パーセントがパート・アルバイト、嘱託・派遣社員などで、その大部分は女性が占め、女性雇用者二二万五〇〇〇人の四一パーセントが非正規職員であった。また、女性雇用者のうち四八パーセントが配偶者を有し、そのうち非正規職員は六三パーセントが有配偶者であり、「主婦はパートへ、子どもは塾へ」の様相と、「婦人解放・男女雇用平等の運動によるもの」とは異なった構造(加藤哲郎 戦後意識の変貌)の一端をかいま見ることができる。
表-24 昭和62年札幌市の雇用形態別・男女別雇用者数及び男女比率調べ(単位:千人)
区分総数女性のうち
有配偶者
 比率(%) 比率(%)
雇用者総数62740264.122535.9108
第1次産業3266.7133.31
第2次産業総数14210976.83323.219
民間の役員141392.917.11
正規職員1028381.41918.69
パート・アルバイト18633.31266.79
嘱託、派遣その他8787.5112.51
第3次産業総数48129160.519139.588
民間の役員302480.0620.04
正規職員34924369.610630.436
パート・アルバイト811316.06884.043
嘱託、派遣その他211047.61152.45
『札幌市統計書』平成3年版より作成。原資料は総務庁統計局「就業構造基本調査」、調査期日は10月1日現在。千位未満を四捨五入し、また、数値には分類不能が含まれているため、総数欄の数値は内訳の合計と必ずしも一致しない。

 いずれにしても平成三年になると、市内の官民合わせた従業者数八六万四六一六人(事業所数八万四七五八)のうち女性の割合は三九・七パーセント(市政概要 平9)、十二年(二〇〇〇)には全体の四二・七パーセントになり、昭和四十五年に比較すると不動産業を除くほとんどすべての産業で上昇し、金融・保険業五六・一パーセント、サービス業及び商業で五三・七パーセントに増加した(表25)。しかし、この間にバブル経済の崩壊により倒産も増加し、平成八年の官民事業所数は八万二七九四に減少した。そして昭和六十二年当時、パート労働者等の増加の影響を受けながらも約八〇パーセントを占めた正規職員の占める割合は、平成八年には七三パーセントに低下し、十一年には民間で七〇パーセントを割り込んだ(表26)。平成五年六月、パート労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)が制定されたが、多様な雇用形態は各産業に広がり、表26が示すように、商業で四七・一パーセント、サービス業で二八・二パーセント、不動産業で三二・九パーセントが、賃金や契約関係の不安定な非正規従業員が占めている。介護保険実施直前の平成十二年一月、札幌地区連合が全国で初めて行った市内ホームヘルパー(一七六九人)の労働実態調査によれば、回答数三〇〇人のうち「非常勤・パート」が七三パーセントで、また、労災保険非加入者四〇・三パーセント、雇用保険非加入者が七七・三パーセントにも上った。札幌市におけるこれらの実態は、パート労働者と正社員との賃金格差などを含む雇用条件問題として、同年二月の衆議院予算委員会でも取り上げられた(道新 平12・3・1)。
表-25 札幌市の主な産業別・男女別雇用者数及び割合の変化
区分昭和45平成12
男女別人員男女別割合(%)男女別人員男女別割合(%)
建設業45,8416,29687.912.165,2419,51087.316.7
製造業35,67615,51769.730.329,34319,53160.040.0
運輸・通信業36,2014,97888.012.048,49011,91580.319.7
卸売・小売業,飲食店57,34944,36356.443.692,216102,91946.353.7
金融・保険業7,6207,12551.748.310,94513,99543.956.1
不動産業1,50994061.638.46,3503,17766.733.3
サービス業41,10935,93053.446.6110,412128,20046.353.7
公務24,5913,64087.112.928,4076,84180.119.9
その他5,4591,45778.921.113,7368,97060.539.5
合計255,351120,24768.032.0409,140305,05857.342.7
『国勢調査報告書』(10月1日現在)より作成。<その他>には、<農・林・漁業><鉱業><電気・ガス・水道業><分類不能>などが含まれる。

表-26 平成11年 札幌市の民営事業所数及び雇用者状況
区分事業所数有給役員等を含む従業者数常用雇用者臨時雇用者派遣・下請従業者
常用雇用者総数正社員・職員パート・アルバイトなど
総数75,913771,414653,670447,028206,64223,70635,592
農林業3844533421511913
鉱業24521431420113781
建設業6,83985,25865,96759,9965,9716,2177,735
製造業2,95149,25742,94529,85013,0951,069756
電気・ガス・熱・水道業333,1583,0922,9291633169
運輸・通信業2,02952,70948,69042,4646,2261,4582,927
卸売・小売業,飲食店33,032288,806246,717130,514116,2035,76212,274
金融・保険業1,61730,30628,83725,6783,159138687
不動産業8,38624,11213,7119,2024,509379594
サービス業20,967236,842202,946145,76057,1868,60410,365
『札幌市統計書』平成13年版より作成。原資料は総務省統計局「事業所・企業統計調査」(7月1日現在)。