ビューア該当ページ

札幌市消費生活安定条例の制定

615 ~ 617 / 1053ページ
 しかし、物価高の異常事態は収まらないため、四十九年三月に市議会経済常任委員会が提案した「生活二法の範囲内では物価抑制に対する市の姿勢が弱すぎるので、これを強化しうるよう条例をつくるべきである」との案に基づき、正副委員長および各会派代表による起草委員会が結成され、狂乱物価から市民生活を守るための拠りどころになる「条例」を、会期中に成立させるべきとの基本線で合意が成立した。争点となった「市議会は業者に対して必要と認めた場合、出席を求め、質問し、応じない場合は市民に公表する」という案文は、「事業者の責務」の条文の項に消化させ、三月二十五日の本会議におき、全会一致の議員立法として札幌市消費生活安定条例が可決成立した。政令指定都市のなかでは最初となった同条例は、東京都の条例を参考にしながらも、北海道価格の解消をも盛り込んだ札幌市独自の消費生活安定条例となった(道新 昭49・3・24、十三期小史、札幌市生活物資等行政概要 昭50年度)。
 札幌市消費生活安定条例は、目的を、「市民生活にとって必要な物資などの円滑な流通と北海道価格(生活物資等のうち、北海道における価格と本州における価格との間に不当な格差のある価格をいう)の解消を図ること。企業の不適正な利得を排除し、物価の高騰や経済の異常な事態から市民生活を守り、安定を図ること」とした。
 業者の責務は、「生活物資等の円滑な流通と価格の安定に努めるとともに、市の施策や市への資料の提出」などの協力をすることとした。また、市と市長の責務については、常に生活物資等の生産、流通等の実態について情報収集と公開を行い、生活防衛組織の育成や実態調査と立ち入り調査、および調査経過や結果の公表、また、事業者が勧告に従わないときは関係行政機関の長に対して必要な措置をとるべく要請し、これを公表しなければならないとした。さらに、北海道価格を解消するため実態の把握と解消について関係行政機関の長に要請し、学識経験者の意見の聴取、議会への報告などが義務づけられた。
 こうして、市消費生活安定条例(以下「市生活安定条例」と略す)は、四十九年四月十二日に公布・施行され、各種の施策が実施された。「市緊急対策会議」は、買占め売惜しみ防止法指定の灯油・トイレットペーパー・合成洗剤・砂糖・大豆などが指定解除される時期においてもなお、札幌市民の生活安定にとっては必要不可欠と判断し、国の解除に先駆けて四十九年五月八日、二七品目を「市生活安定条例」の指定物資とし、さらに市独自で小麦粉・乾めん・即席めん・みその五品目を追加、合計三二品目を指定し、監視下においた(表3)。これらオイルショック時の指定物資を札幌市が解除するのは、五十二年六月三十日である。五十二年五月には、二〇〇カイリ水域問題によって冷凍魚類の買い占めおよび転売が行われ価格が急騰したことから、冷凍サケ・イカ・サンマ、塩サケを指定物資とした。後年のことになるが、これら冷凍魚と灯油、プロパンガスは、ともに平成六年(一九九四)六月三十日に札幌市の新条例である「札幌市消費生活条例」制定に伴い指定が解除されるまで、価格調査および便乗値上げ防止などの監視と指導が続行されることになる。
表-3 札幌市消費生活安定条例による物資の指定状況
NO.物資名指定年月日解除年月日
1小麦粉昭49.5.8昭52.6.30
2乾めん
3即席めん
4食パン
5みそ
6大豆
7大豆油
8大豆油かす
9しょうゆ
10精製糖
11丸太
12製材昭50.8.21
13合板
14印刷用紙昭52.6.30
15ティシュペーパー
16京花紙
17ちり紙
18トイレットペーパー
19綿糸昭49.5.8昭50.8.21
20綿織物
21医療用ガーゼ
22羊毛
23梳毛糸
24梳毛織物
25生糸
26絹織物
27揮発油昭52.6.30
28軽油
29重油
30合成洗剤
31灯油平6.6.30
32液化石油ガス
33冷凍サケ昭52.5.30
34冷凍イカ
35冷凍サンマ
36塩サケ
札幌市『生活物資等行政概要』昭50・51・52年度、『消費者行政事業概要』平6年度より作成。