札幌市消費生活安定条例は、目的を、「市民生活にとって必要な物資などの円滑な流通と北海道価格(生活物資等のうち、北海道における価格と本州における価格との間に不当な格差のある価格をいう)の解消を図ること。企業の不適正な利得を排除し、物価の高騰や経済の異常な事態から市民生活を守り、安定を図ること」とした。
業者の責務は、「生活物資等の円滑な流通と価格の安定に努めるとともに、市の施策や市への資料の提出」などの協力をすることとした。また、市と市長の責務については、常に生活物資等の生産、流通等の実態について情報収集と公開を行い、生活防衛組織の育成や実態調査と立ち入り調査、および調査経過や結果の公表、また、事業者が勧告に従わないときは関係行政機関の長に対して必要な措置をとるべく要請し、これを公表しなければならないとした。さらに、北海道価格を解消するため実態の把握と解消について関係行政機関の長に要請し、学識経験者の意見の聴取、議会への報告などが義務づけられた。
こうして、市消費生活安定条例(以下「市生活安定条例」と略す)は、四十九年四月十二日に公布・施行され、各種の施策が実施された。「市緊急対策会議」は、買占め売惜しみ防止法指定の灯油・トイレットペーパー・合成洗剤・砂糖・大豆などが指定解除される時期においてもなお、札幌市民の生活安定にとっては必要不可欠と判断し、国の解除に先駆けて四十九年五月八日、二七品目を「市生活安定条例」の指定物資とし、さらに市独自で小麦粉・乾めん・即席めん・みその五品目を追加、合計三二品目を指定し、監視下においた(表3)。これらオイルショック時の指定物資を札幌市が解除するのは、五十二年六月三十日である。五十二年五月には、二〇〇カイリ水域問題によって冷凍魚類の買い占めおよび転売が行われ価格が急騰したことから、冷凍サケ・イカ・サンマ、塩サケを指定物資とした。後年のことになるが、これら冷凍魚と灯油、プロパンガスは、ともに平成六年(一九九四)六月三十日に札幌市の新条例である「札幌市消費生活条例」制定に伴い指定が解除されるまで、価格調査および便乗値上げ防止などの監視と指導が続行されることになる。
表-3 札幌市消費生活安定条例による物資の指定状況 |
NO. | 物資名 | 指定年月日 | 解除年月日 |
1 | 小麦粉 | 昭49.5.8 | 昭52.6.30 |
2 | 乾めん | 〃 | 〃 |
3 | 即席めん | 〃 | 〃 |
4 | 食パン | 〃 | 〃 |
5 | みそ | 〃 | 〃 |
6 | 大豆 | 〃 | 〃 |
7 | 大豆油 | 〃 | 〃 |
8 | 大豆油かす | 〃 | 〃 |
9 | しょうゆ | 〃 | 〃 |
10 | 精製糖 | 〃 | 〃 |
11 | 丸太 | 〃 | 〃 |
12 | 製材 | 〃 | 昭50.8.21 |
13 | 合板 | 〃 | 〃 |
14 | 印刷用紙 | 〃 | 昭52.6.30 |
15 | ティシュペーパー | 〃 | 〃 |
16 | 京花紙 | 〃 | 〃 |
17 | ちり紙 | 〃 | 〃 |
18 | トイレットペーパー | 〃 | 〃 |
19 | 綿糸 | 昭49.5.8 | 昭50.8.21 |
20 | 綿織物 | 〃 | 〃 |
21 | 医療用ガーゼ | 〃 | 〃 |
22 | 羊毛 | 〃 | 〃 |
23 | 梳毛糸 | 〃 | 〃 |
24 | 梳毛織物 | 〃 | 〃 |
25 | 生糸 | 〃 | 〃 |
26 | 絹織物 | 〃 | 〃 |
27 | 揮発油 | 〃 | 昭52.6.30 |
28 | 軽油 | 〃 | 〃 |
29 | 重油 | 〃 | 〃 |
30 | 合成洗剤 | 〃 | 〃 |
31 | 灯油 | 〃 | 平6.6.30 |
32 | 液化石油ガス | 〃 | 〃 |
33 | 冷凍サケ | 昭52.5.30 | 〃 |
34 | 冷凍イカ | 〃 | 〃 |
35 | 冷凍サンマ | 〃 | 〃 |
36 | 塩サケ | 〃 | 〃 |
札幌市『生活物資等行政概要』昭50・51・52年度、『消費者行政事業概要』平6年度より作成。 |