札幌市では、昭和四十七年(一九七二)九月一日から「札幌市公害防止条例」を施行して、本格的な公害対策がスタートした。煤煙については小規模施設からの煤煙と使用燃料のイオウ含有量を規制し、粉じんについては、鉱物や土石の堆積場などを規制し、騒音については、騒音規制法適用外の工場の施設と拡声放送を規制した(札幌市環境局公害部『札幌市の公害の現況と対策 昭和50年度版』以下公害対策 昭50などと略す。なお平成四年度版から『札幌市の環境』となる)。
この頃、札幌市は、大気汚染、水質汚濁、騒音と振動、悪臭、廃油、農薬、PCBを公害調査の対象としていた。大気汚染には、主に暖房装置からはき出される煤煙、自動車の排気ガス、採石場などで発生する粉じん、水質汚濁には、工場排水や鉱山廃水などによる河川汚濁、地下水汚染、騒音と振動には、工場騒音・振動、建設騒音・振動、自動車騒音、拡声放送騒音、深夜騒音、航空機騒音など、悪臭には畜舎などの悪臭、自動車などから出る産業廃棄物としての廃油などとその種類や発生源などをあげている(公害対策 昭47)。
これらの対策のため、札幌市では、さまざまな調査を実施して現状を把握し、発生源となる施設などの監視、発生源を押さえるための指導方針や基準などを決めた。公害の指導要綱などとは、札幌市おける大気汚染緊急時対策要綱(昭47・7)、札幌市振動防止指導要綱(昭48・10)、札幌市採石場指導要綱(昭49・3)、開発行為等における汚水放流の指導要綱(昭53・8、昭55・4)、地盤沈下防止対策に係わる当面の実施方針(昭57・12)、建設作業に係わる指導方針(昭56頃)、札幌市地盤沈下を防止するための地下水節水指導要綱(昭63・4・1施行)、建築物の吹きつけアスベスト処理工事指導指針(平1・6)、カラオケボックスの騒音を防止するための指導方針(平2・2)、地盤沈下防止対策に係わる行政指針(平2・4)、ゴルフ場の農薬に係る指導方針(平2・6)、札幌ダイオキシン類対策取組方針(平11)、札幌市小型焼却炉等の設置及び管理に関する指導指針(平11)などである(公害対策 昭48~平2、札幌市 札幌市環境白書 平成15年版より)。
例えば水質汚濁対策のためには、豊平川では豊橋から中沼処理場下流までの一二地点で、水素イオン濃度、生物化学的酸素要求量、浮遊物質、溶存酸素、ABS(合成洗剤)、大腸菌群数の調査を行い、水質防止法に係わる特定事業場設置状況を調査し、工場排水調査を行って、それら特定工場やそれ以外の工場等の監視指導を行っている(公害対策 昭48)。そして昭和五十年八月には、札幌市水質汚濁防止指導要綱を制定した(公害対策 昭52)。
一方北海道は、内閣総理大臣の指示により札幌地域公害防止計画(昭52・1認可)により規制・監視した。その対象地域は、札幌市、江別市、石狩町(現石狩市)、実施期間は昭和五十一~五十五年度の五年間であった。大気汚染(二酸化イオウなど五種)、水質汚濁、騒音、悪臭、地盤沈下などの達成目標と達成期限と防止対策を示している。例えば、地盤沈下の場合、目標は「地盤沈下を進行させない」、達成期限は「可及的速やかに進行を止める」、対策は「水準測量や観測井などの観測体制整備を図り、地下水の揚水実態の把握、地下水の涵養機構などの調査などを行うとともに、地下水揚水規制などの対策を検討する」としている(公害対策 昭52)。その後、四次の五年計画を実施し、現在は平成十三年度から十七年度までの第六次計画を施行中である。それによると、札幌市だけを対象とし、国道一二号などの主要幹線道路沿いの二酸化窒素などの大気汚染と騒音の防止を図る交通公害対策、茨戸川などの水質汚濁の防止を図る都市内河川の水質汚濁対策、そして廃棄物・リサイクル対策を主要課題としている(北海道『札幌地域公害防止計画』平13・12)。