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結核の減少と再流行

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 結核は不治の病ではなくなったが、依然として伝染病のなかの最大の脅威である。
 札幌市の結核登録者は昭和四十六年末に一万二〇〇五人の多数にのぼり(表17)、四十七年の新規登録者も一四二一人と四桁で、四十七年には患者二二二人が死亡している。それ以前の三十一年の死者二八〇人に比較しても、急激な減少率とはいえない状況であった。五十年代前半には新規登録者が毎年約三〇〇人ずつ減少したものの、死亡者は一五〇人を超えるなど、一種類の伝染病としては他に類例をみない患者、死亡数である。五十年代後半期から平成期にかけては減少率も鈍く、横ばい状況が続いた一方、新規に登録される患者が毎年約六〇〇人も発生したことから、六十三年十二月には市立中学校の中学一年生に、心音心電図の検査を行った(北海道の結核)。各年の新規登録者は平成元年から七年までは五〇〇人台、八年から十一年は四〇〇人台で推移し、四〇〇人を割って減少したのは十二年になってからである。
表-17 札幌市結核患者登録及び抹消状況(単位:人)
年次前年末現在新規登録者死亡本年末現在
昭4712,0051,42122212,434
 519,0078641908,660
 556,1616911535,777
 593,6785901573,446
 632,8626581202,809
平 42,4765211302,375
  82,021484821,408
 121,193360641,008
『札幌市衛生年報』より作成。死亡は、結核登録患者が結核以外の死因により死亡した数を含んでいる。

 全国的にも長年減少を続けていた新規登録者の罹患率が、三十八年ぶりに増加に転じたのは平成九年(一九九七)である。十一年に全国の新患者が四万四〇〇〇人になったことから、厚生省は同年七月に「結核緊急事態宣言」を発し、健康診断など対策の強化を各自治体に要請した。これを受けて市保健衛生部は、結核患者が停滞し再流行する傾向にある半面、市民だけでなく医師の間ですら「結核は過去の病気」との認識が根強いため、医師向けの「結核診療機能強化研修」を実施した。新患者の年齢はほとんどが中高年齢者であったが、二〇歳から二九歳の青年層も七年に五三人、以降、十二年まで四〇人前後で推移し、職業も接客業や教師、医師、高校生も含まれていた。十一年の市の新患者は集団発生ではなく、年齢も五〇歳代以上が三六二人と高齢者がほとんどで一四歳以下は二人にとどまったが、十二年には高校生三〇人が感染し、某病院でも患者と職員の集団感染がみられた。しかし他人に感染する排菌症状はみられず、患者数も減少に転じた(北海道 平成9・10年結核発生動向調査年報集計、札幌市保健所 札幌市における結核情報、道新 平11・9・28、12・12・15夕)。高齢者の発症の原因は、若い頃に感染した結核菌が老化による免疫低下とともに活動を再開したものとみられ、対策は地区会館や町内会会館で胸部エックス線の無料健康診断を行ったり、子どもには四カ月児健康診査時にあわせてツベルクリン反応検査を実施し、陰性であればBCG接種を継続した。