以上のように、戦後における障がい児教育制度は、盲・聾学校中心の時期から、養護学校と「特殊学級」の整備の進展と義務教育制度の確立の時期へと変遷してきたが、その後、通常学級に在籍する障がい児にも障がい児教育が提供される時期となった。平成五年の「通級による指導」の制度化がその現れの一つである。通級による指導とは、通常学級に在籍する障がい児で特別な教育課程を必要とする者に対して、その状況に応じて、別の教育機会を与えるという制度である。この制度の意義は、通常学級在籍の障がい児児童の問題に焦点をあてたことであり、それが学習障がい児(LD児)の問題にまで発展した。十五年三月、「今後の特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議」は最終報告をまとめ、その中でLD児やADHD(注意欠陥/多動性障がい)、高機能自閉症などの児童・生徒が通常学級の六パーセントにおよぶことが示された。また報告は、障がい種にとらわれないセンター的機能をもつ特別支援学校と、「特殊学級」「通級指導教室」を一本化した「特別支援教室」への制度転換、「特別支援教育コーディネーター」の配置などを提起した。これをうけて文科省は十六年一月に『小・中学校におけるLD、ADHD、高機能自閉症の児童生徒への教育支援体勢の整備のためのガイドライン(試案)』を発表した。