企業内教育を主軸とする職業教育・訓練は、職業教育の日本的特徴をなしてきたが、このことは職業教育をめぐる大企業と中小企業の格差を拡大させる要因となった。中小企業の場合、大企業のように社内で社員教育の態勢を整備することが容易ではない。この結果、厚生労働省(旧労働省)による職業訓練や地方自治体による勤労者教育、成人教育、青少年教育がこれを補完する役割を担ってきたとはいえ中小企業の多くが社員教育において遅れをとってきたことは否定できない。
このような中で商工会議所、中小企業協同組合中央会などの中小企業団体も独自の役割を果たしてきた。その中で特徴ある活動を続けている事例として、北海道中小企業家同友会の社員教育を挙げることができる。
北海道中小企業家同友会は昭和四十四年に設立されて以来、自主、民主、連帯を理念とし、憲法、教育基本法、およびユネスコ「学習権宣言」(一九八五年)を教育理念の基本に据えて、札幌を拠点として全道各地で独自の社員教育を行っている。とくに五十六年に開設された「同友会大学」は社員教育の中心をなし、中堅幹部の育成を目標にして年二期制(一期:三〇~四〇人、期間:四カ月、約三〇講座)で継続して実施しており、これまでに二〇〇〇人近い卒業生を出して「経営者大学」やその他の社員教育とともに注目されている。