「札幌に限ったことではないが、大学の研究者が(略)評論、研究、指導、実作に積極的であるのは北海道の独自性で喜ばしいことだ」(川辺為三「同人雑誌運動」『'89―北の文学』所収)とも書かれたように、北海道大学や藤女子、北海学園、北星学園、札幌大学など多くの大学・短大を抱える札幌は、大学教員や卒業生らの人脈を活かした文芸誌も生んでいる。
五十三年創刊の『オリザ』は北大の工藤正廣が編集発行をつとめ、菊地昌実、神谷忠孝、矢口以文(よりふみ)ら大学教官を中心とした誌面であったが、平成元年以降休刊となっている。五十九年八月には前述の工藤、神谷ら北大教官を軸に『響文』が創刊された。六十二年の六号で休刊となったが、日高昭二の李恢成論や我孫子晴美の内田百閒論など、重厚な研究論文掲載の場となった。
北大国文科卒業生・大学院生による評論誌『異徒』は、五十五年五月の創刊である。創刊同人は一七人で、小森陽一、中澤千磨夫、立花峰夫ら近代文学研究をリードするメンバーが名を連ねた。二号の石川奈保子「プロレタリア文学における〈身体〉性」、八号の千葉孝一「迷走する強迫観念―椎名麟三論」などは学界でも高い評価を得たが、平成三年に九号が出た後は休刊している。創作では、北大文芸部の『ぎよ』(『春楡』を改題、五十九年創刊。平成十四年四月から『創造爆弾』に改題)で脇本浩司、鳥羽耕司らが活躍した。鳥羽は平成元年に松山市の「坊っちゃん文学賞」佳作に入賞し、男性誌にコラムを書くなど活動の場を広げた。
藤女子大国文科出身者らによる評論誌『評林』は五十四年創刊であり、五十八年の五号までに佐多稲子論や武田泰淳論などが書かれた。同大児童文学研究会OBの評論誌『四月うさぎ』は五十九年の創刊であり、十六年に九号が出ている。
また、有島武郎を語る有島記念館友の会「星座の会」(昭和六十一~平成十六年)や、平成元年に始まった道労働文化協会の文学リレー講座などでも、多くの大学教員が講師を担当している。