女性作家の活躍の一方、文芸誌の売れ行きはしだいに右肩下がりとなり、平成九年三月、『北方文芸』が三五〇号で終刊となった。
木原直彦が「北海道文学散歩」を休載なく三五〇回書き継ぎ、また、
寺久保友哉、
小檜山博らスターを生んだ貴重な場の終焉(しゅうえん)であった。翌年、
澤田誠一を編集発行人に『北方文芸別冊』が刊行されたが、終刊宣言は『北方文芸』三〇年の重みを顧みる〈事件〉でもあった。表4は、
鷲田小彌太「『北方文芸』創作ベスト20」(北海学園『北海道から』七号、平成二年)を転記したものであるが、いずれも北海道文学史を代表する作品群といえる。
作者 | 作品 | 掲載年・月号 |
澤田誠一 | 斧と楡のひつぎ | 昭43年9月号 |
中野美代子 | 蜃気楼三題 | 45年4月号 |
小松 茂 | 雨音 | 48年4月号 |
寺久保友哉 | 停留所前の家 | 49年8月号 |
倉島 齊 | 團欒 | 50年7月号 |
小檜山 博 | 出刃 | 51年5月号 |
佐藤泰志 | 深い夜から | 51年8月号 |
川辺為三 | 島よ、眠れ | 54年10月号 |
朝倉 賢 | 点睛 | 55年7月号 |
澤井 繁男 | 雪道 | 59年9月号 |
白井 秀 | 兄嫁へのことば | 59年11月号 |
北江 青 | イスラムの戦場へ | 59年12月号 |
根津己貢子 | 痴人のノートから | 60年1月号 |
田村喜恵 | 猫の骨 | 60年5~6月号 |
蒲生ゆかり | イミテーションの夏が降る | 61年6月号 |
朴 重鎬 | 密告 | 62年2月号 |
熊谷政江 (藤堂志津子) | マドンナのごとく | 62年4月号 |
甲斐ゆみ代 | わが心くずほるるとき | 63年2月号 |
廣瀬 誠 | 遠すぎる栄光 | 63年4月号 |
木下順一 | 湯灌 | 平 2年4月号 |
番外・小日向白郎 | ミノタウロ | 昭61年特別号 |