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民間の劇場

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 前項でも分かるように、劇場と芝居づくりの関係はたいへんに深いものがあるといえる。民間の劇場としては、前出の札幌本多小劇場がまず挙げられるだろう。札幌演鑑とはひと味違う東京の芝居を招聘(しょうへい)し、プロデュース公演を企画し、養成機関としてホンダスタジオを創設するなど、北海道の演劇界に大きな影響を及ぼした。ただ残念ながら経営的には失敗して撤退してしまうが、平成五年にオーナーが変わりルネッサンス・マリア・テアトロと改称され、鈴木喜三夫+芝居の仲間オーパーツ、P・プロジェクト、芝居のべんと箱などの劇空間として大きく評価され始める。
 五十六年の駅裏8号倉庫、江別・どもの流れと同質のコンカリーニョ(平7)は、琴似駅前劇場といわれた日食倉庫を改造した劇空間であった。そこから生み出されたのは芝居だけでなく音楽や踊りまで幅は広い。魴鮄舎(ほうぼうしゃ)、極などの芝居がそこから生まれたし、帯広や釧路の小劇場公演も演じられた。
 ただ残念ながらマリア・テアトロは平成十二年に売却されて閉鎖となり、コンカリーニョも最近解体されて今はない。しかし札幌の劇場を考える会が若手演劇人によって結成され、コンカリーニョはNPO(民間非営利団体)法人として、再建をめざし新しい活動を始めた。
一つの劇場が消えたという単純なことではなく、少なくとも「北海道演劇」がこれから獲得するに違いない成果の何割かを失ったというのは言い過ぎだろうか。
(250席の永遠 平13)

 この悔しい思いの中に、札幌の演劇人たちの心意気を感ずる。