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多様化する絵馬

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 もともと神前に本物の馬を供えたことに端を発し、やがて代用として馬の絵が描かれたことに由来する絵馬だが、時代や人々の願いを反映して、馬以外の様々な絵が描かれるようになった。「苦しい時の神頼み」という言葉で語られるように、絵馬は日本人の現世利益的な心意を象徴するメッセージ・ボードでもある。
 祈願内容は、合格祈願を中心に、恋愛、病気のような個人、家族、友人にまつわる問題から、会社、コンサドーレや日本ハム球団のようなひいきのスポーツチームの応援まで、実に多種多様である。近年は、拓銀破たんや長引く不況、就職難など、世相を反映して、絵馬に込められた願いも以下の報道のように複雑である。
「自主廃業しませんように」と書かれた絵馬には「損保 男性」とあった。拓銀、山一証券など相次いだ金融機関の破たんで、今のご時世、企業の先行きは不透明。一寸先は闇(やみ)。そこで「家内安全」ならぬ「社内安全」を祈り、「とり返しのつかない巨大な失敗だけはかんべんして」と訴える。「平穏な一年を送りたい」「道内景気が上向くように」…。
 だが、倒産を心配する前に、職探しもままならない。「早く就職が決まりますように」「いい仕事を見つけたい」。若者たちの今年にかける思いは熱い。「職が決まるよう心から願います」と、わが子を案じる母親の心情が伝わるものや、「就職してやる」と半ば開き直りの決意表明も。
(道新 平成10・1・10夕)

 絵馬の形状や素材、奉納場所も様々で、神社で頒布している絵馬の他、自主制作の巨大な絵馬、芸術性の高い絵馬を集めた展示会も催されている。中には干支をあしらった絵馬チョコレートまで現われるなど、絵馬そのものの価値も様変わりしている。世相に敏感な百貨店や鉄道会社では絵馬コーナーのみならず、臨時に神社を設けて人々のニーズに応えている。平成十一年には「コンサドーレ神社」も出現している。
サッカーのコンサドーレ札幌のJ1復帰を祈願する「コンサドーレ神社」が二日、札幌市中央区の丸井今井本店大通館地下二階に設置された。
 神社はチームを運営する北海道フットボールクラブ(HFC)公認で、ご神体はチームのマスコット、ドーレくん。絵馬かけにはファンから岡田武史監督への激励の言葉が並び、さい銭箱には千円札も投げ込まれた。神社は十二日まで設置され、絵馬北海道神宮に、さい銭はチームに渡される。財政難に悩むHFCには文字通り「物心両面」の支援となりそう―。
(道新 平11・1・3)