5 選挙・吏員
区(市)町村会選挙
1888年(明21)に「市制」「町村制」が,翌89年に「衆議院議員選挙法」が,90年には「府県制」が公布されたが,北海道は適用されなかった。1897年に「北海道区制」「北海道一級町村制」「北海道二級町村制」が公布され,札幌区が99年に区制の,札幌村・手稲村・豊平村・白石村が1902年に一級町村制の,篠路村・藻岩村・琴似村が1906年に二級町村制のそれぞれ適用を受けた(その後,札幌区は1921年に市制施行され,豊平村は1907年に,琴似村は1923年に,札幌村は翌24年に,藻岩村は1931年に,白石村は翌32年に,それぞれ一級町村を適用された)。これにより札幌区会および各村会の議員選挙が行われることとなった。1901年に「北海道会法」「北海道地方費法」「北海道会議員選挙法」が公布され,同年第1回の道会議員選挙が行われた。北海道の衆議院議員選挙は1902年の総選挙からで,この時は札幌,函館,小樽の各区のみに適用された。1904年からは全道で衆議院議員選挙が施行された。
本統計編では,各区(市)町村会議員選挙有権者数,道会議員選挙有権者数,同被選挙権者数(札幌区(市)のみ),衆議院議員選挙有権者数の各表を掲載した。札幌区(市)のデータは,1899年(明32)~1917年(大6)では3年ごとの区会選挙時の有権者数しかわからないが,それ以外についてはよく揃っている。これに対して,合併町村は史料の保存状況が悪く,琴似村(町)のデータが1916年(大5)~1940年(昭15)に連続して得られる外は,あまり継続的なデータは得られない。表としては非常に不充分なものであるが,しかし札幌市に合併されて,いまはないこれら町村のデータをできる限り拾って公にしておくこともまた重要な意味があると考えて,表を作成しておくこととした。
各種選挙の選挙権・被選挙権資格,議員定数,議員任期,選挙区制度などについては,本解説では述べる紙幅がない。それらは,各選挙の施行年月日,投票者数,投票率,得票者数,候補者名と会派なども含めて,『札幌の選挙―120年のあゆみ―』(札幌市選挙管理委員会 1988)に詳細が記載されているので,そちらに譲りたい。また,上記各種選挙制度の実施される前の戸長や総代人制についても同書に詳しいので参照されたい。
吏員と歴代区(市)町村首長
札幌区(市)吏員数および俸給額については,『札幌区(市)統計一班』に記載されており,1907年(明40)よりデータを得ることができる(第136,137表)。
総員数は1907年より数年間は増勢であったがその後しばらく停滞し,市に移行した年度から急増している。「主事」以下,各職種とも増加傾向にあるが,特に「傭員」の増加が大きかった。1926年(昭1)より原典の記載形式が変更され,部所別となる。1926年の219人から1929年には382人へと総員数は163人の増加となる。この増加の要因は,「市役所」の増員とともに,「電気局」の設置によるところが大きい。昭和恐慌期の1931(昭6)~33年には「市役所」の減員が見られるが,しかしその後すぐに直前の水準を回復し,1935年には「水道部」が設置されて,総員数はさらに増大している。なお,俸給額については,他の職業の賃金や物価の変化と重ねることで,戦前地方都市吏員の給与の水準や変遷を知る史料となりうるものであろう。
最後に,第138表「歴代区市町村長名(市町村別)」を掲げておいた。『札幌の選挙―120年のあゆみ―』に,「札幌市と札幌市合併町村の首長選出(選挙)及び就退任の推移」の表が掲載されているが,出典の記載がなく,各市町村の要覧等と照らし合わせたところ多々誤りがあったため,本表を作成して便宜に供することとした。
―参考文献―藤田武夫『日本地方財政発展史』(河出書房 1949,文生書院復刻 1977),『札幌の選挙―120年のあゆみ―』(札幌市選挙管理委員会 1988)