明治元年戊辰十月 1
伊那県布令書
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村々名主組頭百姓代へ
申渡旨趣
何事によらず古きに馴れ仕来になづむは
人情の常ニ候へども、今般
王政御一新之折柄、舊弊を渾て御除き被
遊候半でハ 御新政被施候詮も無之候
ニ付、追々御改正ニ可相成事可有之候へ共
詰りハ無用之費を省き疾苦を厭ひ庶民共
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安心に産業出来候様被
思食候間、心付候儀も有之候ハハ、忌憚る事
なく可申出事
但し申出かね候事件ハ書認め目安箱
へ差入可申事
一 第一御定之制札三枚之面は勿論、其餘
御布告之条々件々能々拝見いたし、弁へな
き者にハ名主より念入分り易く読聞セ置、
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一ケ条たりともゆるかせに心得申間敷事
一 御制札之面にも有之候通、年よりて妻なく、
年よりて夫なくいとけなくして親なき者、
老て子なきもの、かたわものハ申ニ及ばす
火水盗賊疾病等之災難に逢ひ渡世りの産
業を失ひ全く正直にして難渋之者あらバ
速に申出べし、勿論名主親類始め身元よろ
しきものは精々申合セ、救助の道をつくすべ
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き事
但し組内之者必至困窮ニ迫り、筋なら
ぬ死をとげ、或ハこつじきに落ち、又は
悪心を生じ盗賊ニ陥り候もの出来候
は、其処之名主はじめ畢竟平生世話筋
不行届ニ当たり、上ニおいても深く痛
ましく憐むべき限りに被
思召候へば、よりより御世話も可有之
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間
御政体を篤と相弁へ名主始め精々世
話筋行届候様可心掛事
一 農業精出し荒地等出来不致様可心掛候、尤
名主始重立候者ニおいても常々見聞いた
し、精々心を用ひ世話可致事
但 新田開発を始 御国益筋之義存
付候ハゝ申出、吟味を受可申事
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一 御年貢始め諸役悉皆大切ニ可相勤事
一 凶年飢歳之備常々厚心掛、厳敷倹約を守り、
穀類ハ申ニ及ばす食料ニなるべき野菜等
貯おくべき事
一 五人組之儀、町ハ家並、在郷ハ最寄次第五軒
宛可組合、其内数多少出来之處ハ七八軒、
又者四軒迄ニ組合すべし、家並つどひ候所
は隣り合せ向ひ三軒割を以て組合を一
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組内一人宛頭を立べき事
一 五人組者親類同様むつましく相交り、吉凶
相助け、疾病相憐ミ、盗賊水火之難其外非常
等有之ときは、互に相救ふべき事
但 組内常々善をすゝめ、悪をいましむ
べきハ勿論なり、若善行奇特之もの并
孝子貞女義僕等都而心掛宜敷もの、又
者行状あしく村内之害ニなる者あら
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者、早速五人組頭へ申出、五人組頭より名主へ
申出、名主より当役所へ訴出べし、万
一名主共私意など構へ、如何之取計ひ
有之趣追而顕るゝにおいて者、其者ハ
申ニ及バす、事ニより五人組并役前之
越度たるべし、其餘喧嘩口論を始め何
によらず変事有之節ハ、是又五人頭へ
届出、五人頭取捌きがたき時ハ名主へ
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申出、共々相かたらひ取鎮むべし、自然
取扱ひ兼候時者、当役所へ可申出事
一 町在郷ニ於て欠落ものを始め、諸浪人并独
身にて怪敷ものに一夜之宿も貸し申間敷、
且親類縁者又ハ所出生の者ニ候共、数年他
所に罷在立帰り候ハゝ、其段役前へ書付可
取置事
一 毎年人別改之儀念入取調可申事
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但 他所ヘ出稼等に出居候ものハ、其由
其者名前の上に朱書にて何地に罷在
候子細相記し可申、且縁組其外人数出
入有之節ハ、互ニ人別送證文正しく取
引可致事
一 田畑山林売買堅く停止之事
但 百姓持来候田畑譲引、猥がましき儀
致べからざる事
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一 博奕始め賭之諸勝負等厳しく禁止之事
一 旅人病人手負其外道路に倒れ居候者有之
候ハゞ、生所等聞糺し可遂介抱、若相果候ハ
ゞ其者之年齢始め委敷取調べ可申出事
一 人を売買いたす事一切停止之事
一 用水之義大切に相心得、理不盡ニ水引入候
儀致まじき事
一 拾ひ物落しもの等いたし候ハゞ、其旨其時
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ゝ可訴出事
一 助郷村々は宿方問屋より人馬触当候ハゞ
無遅滞刻限通り急度可相勤事
一 諸願訴詔事難渋之筋あらバ、其所之名主篤
と聞糺し奥印せしめ、早速可申出候、萬一故
障筋いたし名主之許に留置、不正の取計ひ
等於有之ハ曲事たるべき事
但し名主を相手取候儀ハ、五人頭又ハ
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親類取次奥印せしめ可申出、其内名主
親類五人頭等へかゝり差支候ハゞ、其
訳認めあらはし何村誰と名をしるし
て目安箱へ可入置事
一 願伺届等月々一六之日並相休ミ、日々四ツ時
より八ツ時迄ニ可差出、其内至急之儀ハ此限
に拘るべからさる事
一 呼出之儀、里数之遠近をはかり難儀ならざ
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る様可申遣候間、差刻限をたがえざる様参
着いたし、其段可相届事
明治元年戊辰十月
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(印)