木曽御料林雑詠十首

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          三 村 千 載
千早振神代の代よりしけりけん
      ひるもをくらき木曽の檜原は
朝な夕な真木の茂れる木曽山に
      雲のかゝれるさまのをゝしき
山といふ山はあれどもとこもはに
      真木木のしけれるやまは木曽
そのむかし伊勢の宮木を伐いてゝ
      こたまにひゝくほまれ高くも
君むかしゆつりまつりし木曽山の
 
  (改頁)      14
 
      いまは御料となりにけるかな
深山木もめくみの露にうるほひて
      ときはかきはにいや栄ゆらん
み林をゆつりまつりしまこゝろは
      なかれてきよし木曽の川みつ
み林のあはひに匂ふもみちはゝ
      民のこゝろのもゆるなりけり
うゑて伐りきりては植うる大木曽
      小木曽の檜原つくるときなし
山といふ山の檜原にとはすとも
      木曽のみ山と人はいふらん