葵紋蒔絵柄鏡掛(あおいもんまきええかがみかけ)・
柄鏡(えかがみ)
[目録を見る] [ 宝物解説へ ] 柄鏡掛は全面黒漆塗りで、蓋と脚に金蒔絵の円内葵紋を描き入れている。鏡本体の背面飾り模様は松竹梅、鶴亀、実南天など複雑な吉祥文で、画面内左側に「津田薩摩守家重」の銘が鋳込んである。勝興寺へ招来した由来を示す資料はないが、徳川家の葵紋がついているので、将軍家ゆかりの品に違いない。
和鏡は古墳時代以来円鏡であったが、室町時代の末期に柄をつけた柄鏡が開発されると非常な勢いで流行、さらに江戸時代元文[一七三六~四〇]頃に踏返しと呼ばれる生型鋳造法が開発され、量産による安価な鏡が出回ると、たちまち庶民にまで普及した。その新鋳造法を開発したのが、この鏡の作者「津田薩摩守家重」である。禁裏御用鏡司、青家に伝わる『御鏡仕用之扣書』に「・・津田薩摩守家重・・此種きれいにして銘も至ってあざやかなり、是、踏型並吹やの始めなり・・」と記している。
この鏡掛が葵紋を付けている割に素朴なこと、鏡が量産品であること等を考え合わせると、婚礼調度でなく大奥で日常的に使用されたものであろう。長年大奥に勤めていたといわれる尊弘の母、本徳寺妙寿から尊弘を経て勝興寺に伝わったものかもしれない。