群千鳥浜松図蒔絵見台(むれちどりはままつずまきえけんだい)
[目録を見る] [ 宝物解説へ ] この見台について何時何処で作られ、誰が何処から勝興寺に招来したかを証明するものが一切残っていないが、伝統的な千鳥浜松図の多種多彩で雅趣に富む風物を、天板から底板、表側から裏側まで余すところなく使って優雅に表現した秀作である。
地色は黒蝋色塗。州浜は形なりに金の板を切とった金貝(かなかい)[平脱文・平文]に金平目地を配し、切金をその上に散らして立体感を出す。海面は金平目地に細い金粉を蒔いて濃淡をつけ、波は金粉の付書。雲は金平目地に金粉ぼかし、樹木の幹や、草庵、岩などは金高蒔絵、松の青葉や春草は銀蒔絵で青味をもたせ、松葉の細部には針描を施す。千鳥と桜花は、貝(殻粉や卵殻粉を用いベージュ色を主調に白色が混在した複雑な色合いである。一見白く見えるので、城端漆器の白漆塗と間違われることがあるが、城端塗の白漆は鉛の化合物を加工した真白なもので、この見台に用いられている貝殻粉や卵殻粉等の天然素材とは組成も色彩も違う。家紋が描かれていないし、婚礼調度かどうかも不明だが、製作年代と産地は、技法が多彩で上品なこと、高蒔絵から平蒔絵に移る工程が滑らかなこと等から、江戸時代後期の京蒔絵と推定される。