神保氏張制札

神保氏張制札


神保氏張制札(じんぼうじはるせいさつ)     [目録を見る]   [ 宝物解説へ ]
 古国府に勝興寺を招くにあたり、国支配者側からの全7項目の申し付け事項である。
 ①寄進地は府之分一円である。二町四方だった旧越中国庁跡地を給された。
 ②寺内に対して諸公用銭の賦課徴収は免除される。他から要求されても拒絶せよ。
 ③寺用の舟運行にも領主方の手形を必要とすること。
 ④年貢などの公用を務めない者を寺内に置かないこと。
 ⑤俗人は寺内に別家を持てないが、寺方の設置家はおかまいなし。
 ⑥犯罪者が寺内に逃げ入ったら、追い出すこと。
 ⑦参詣者からの渡舟賃徴収は、馬は銭二銭、人は一銭。参詣僧や寺内者は徴収免除。
 成立期の前田家にとっては一向一揆寺院対策が第一の課題であった。総帥の勝興寺に継続的保護を加えることで、領内の寺院・門徒に対して藩政に協調するように指導することを求め、治安維持を図ろうとしていたと考えられる。

(久保尚文)


   制札    勝興寺 せいさつ    しょうこうじ
 一、府之分一圓令寄進候事、ふのぶんいちえんきしんせしめ候こと、
 一、當御寺内諸役免許事、とうごじないしょやくめんきょのこと、      
      付、不謂儀申懸輩於在之者、   つけたり、いわれなきぎもうしかくるやからこれあるにおいては、
      巌重可申付事、   げんじゅうもうしつけるべきこと、
 一、自御坊御用付而舟於有通路者、舟役之儀自此方ごぼうよりごようについてふねつうろあるにおいては、ふなやくのぎこのほうより
   手判可進候事、てばんしんずべく候こと、
 一、公用無沙汰之百姓等、萬一御寺内へ引入候者、可及其届候間、こうようぶさたのひゃくしょうとう、まんいちごじないへひきいれ候はば、そのとどけにおよぶべく候あいだ、
   早速可被相帰、若理不盡譴責於入置者、被相留可有さっそくあいかえさるべく、もしりふじんにけんせきいれおくにおいては、あいとめられ
   注進候、速可申付候事、ちゅうしんあるべく候、すみやかにもうしつけべく候こと、
 一、不依貴賤、其身ハ有在所、就商買以下、御寺内別家をきせんによらず、そのみはざいしょにあり、しょうばいいかにつき、ごじないべっけを
   可有立置類候、彼輩中不謂働在之者、曲事之旨申たておくたぐいあるべく候、かのやからちゅういわれなきはたらきあらば、くせごとのむねもうし
   付候共、於御寺内相立候家者、不可及其尋候事、つけ候えども、ごじないにおいてあいたて候えば、そのたずねにおよぶべからず候こと、
 一、不論甲乙、依爲犯過人可加其成敗之處、御寺内へ於逃入族者、こうおつをうんぜず、はんかにんたるによってそのせいばいをくわうべきのところ、ごじないへにげいるやからにおいては、
   爲御寺内、彼者可有追放事、ごじないとして、かのものついほうあるべきこと、
 一、自在々参詣輩、諸渡舟賃、馬ハひた二銭、人ハひだ一銭つゝざいざいよりさんけいのやから、しょわたしふなちん、うまはびたにせん、ひとはびたいっせんずつ
   たるへき事、付、参詣坊主衆并御寺内者ニハ一圓宥免事、たるべきこと、つけたり、さんけいぼうずしゅうならびにごじないしゃにはいちえんゆうめんのこと、
   右条々聊不可有相違者也、仍如件、みぎのじょうじょういささかもそういあるべからざるものなり、よってくだんのごとし、
           神保安藝守
    天正十二年      氏張(花押)
        十二月 日

(佐伯安一)