解題・説明
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伝来の詳細は不明だが、断面が花型で器体は円筒形、小さい円形台の上に5段の菓子器を重ね、最上段に蓋をつけた重箱である。金の薄板を使用した金貝(かながい)や截金(きりかね)、青貝螺鈿、色漆塗などの漆芸技法を縦横に駆使して、器体全体に黒漆地に青貝螺鈿の唐草と多様な模様を張り巡らし、鳥模様や丸紋、角紋を色彩豊かに散らした華麗な器で、図案、技法とも、江戸初期(17世紀後半)に富山藩第2代藩主・前田正甫(まさとし)が京都から招致した、杣田(そまた)青貝細工に酷似している。しかし、富山藩との関連を示す資料が全くない上、随所に桃山時代特有の明快でエキゾチックな感覚の作風を示しているので、富山藩に招致される以前、京都で活躍していた時代の杣田青貝細工である可能性がある。
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