解題・説明
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現存最古の『伝光録』写本。書写は15世紀後半までくだるが、その本文は14世紀後半、すなわち『伝光録』が伝播を始めて間もない時代の古形を保持していると考えられる。古形を保持した本文『伝光録』写本には、もれなく錯簡が生じているが、乾坤院本にも複数の錯簡が確認される。本写本の書写年代は、乾坤院所蔵『正法眼蔵』写本と同一の筆跡が見出されることから、『正法眼蔵』の書写が行われた1450年代と比定されている。また、現在は2冊にまとめられているが、これは後代の修訂において5冊本を2冊にまとめなおしたものである。乾坤院本全文の翻刻として、東隆眞校注『乾坤院本伝光録』(隣人社、1970年)および『瑩山禅師 伝光録―諸本の翻刻と比較(1)~(9)―』(鶴見大学仏教文化研究所共同研究成果報告書、2015年~2023年)がある。本写本の全訳はいまだ上梓されていないが、部分的な訳注として、田島柏堂『瑩山』(日本の禅語録第5巻、講談社、1978年)、鈴木哲雄『乾坤院本伝光録(東土篇)研究』(山喜房仏書林、2015年)がある。
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