「総務省統計局人口推計」(平成24年12月概算値)によると、鈴鹿市が誕生した昭和17年以前に生まれた世代(70歳以上)は総人口の17.8%に過ぎない。この世代を戦争体験や戦争の記憶をもつ世代と規定すると、アジア・太平洋戦争の終結から68年を経た現在、戦争体験や戦争の記憶をもつ世代は全国民の2割を下廻り、国民の8割は戦争体験も戦争の記憶をもたない、まさに戦争を知らない世代となっている。
このため、戦争の記憶は、ヒトから戦争の痕跡を残す戦争遺跡・遺構に象徴されるモノへと移り変わりつつある。しかし、多くのモノは、戦後の復興・開発や建造物・構築物の老朽化などにより消滅・解体を余儀なくされている。戦争遺跡・遺構に関しても、平成7(1995)年の文化財指定基準の拡大により文化財指定の扉が開かれたとはいえ、文化財の指定を受け保護・保存の措置が講じられるものは少なく、多くの戦争遺跡・遺構は消滅・解体の道を歩んでいる。
こうした状況を踏まえた時、これからは、ヒトやモノによる記憶だけではなく、戦争に関する記録に基づいた戦中・戦後史の学習がいっそう重視されよう。
そうした意味において、本書に収められた人々の証言・アンケート結果や公文書・『伊勢新聞』の記事は、戦争を知らない世代とって、鈴鹿市の戦中・戦後史を学ぶうえで貴重な記録となろう。
鈴鹿市域における戦争の記憶と記録を継承することが、鈴鹿市の明日を拓く第一歩となるのである。