(3) 工業用水の確保と排水処理

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 工業用水は製造品の種別・工場規模などによって必要水量は異なり、その確保の方法も違っているが、不可欠なものであり、協定書等には必ずあがっている。昭和25年10月の呉羽紡績(株)との協定書では水源を敷地内の深井戸としたが、付近の水脈に影響があった際には市がこれを解決するとある。また、27年8月の旭ダウ(株)の契約書や31年5月の倉毛紡績(株)の契約書では、市の上水道から「特定料金」で供給を受けることになっている。倉毛紡績(株)の場合は「特定料金」の期間が「操業月より向う3ヶ年間」とあるものの、その具体的な料金は明示されていない。ただ、34年11月の敷島重布(株)の協定書では、市の上水道を使用する場合には「一般料金より低い特定料金」とし、その料金について35年9月に別の協定書を結んでいる。1か月最高1,500トンの供給を限度としたが、月単位で常に1,000トンを使用したと考え、満たない場合も1,000トン分の料金を支払うというもので、当初の「特定料金」は1トン当たり金6円であった。この協定書から前述の旭ダウ(株)や倉毛紡績(株)の「特定料金」も察しがつく。なお、27年12月の大東紡織(株)の覚書では、工場設置に伴い市が水道を新設して供給し、「水道使用に関する協定」では1m3当たり3円で1か月14,000m3使用と計算しているが、水道を新設したためか割高であった。

 一方、昭和35年1月の本田技研工業(株)との「工業用水についての協定書」では、会社が自家用水道施設を設置することにし、その施工・監督を市に委託するとした。会社側の負担は水源と工場地内受水槽までの送水施設の工事費で、水源地と工事・保全道路の用地費及び道路造成費は市が支払い、水源地から工場敷地までの道路は市道として管理する協定であった。

 次に排水については、呉羽紡績(株)や旭ダウ(株)の協定書等では既存の工場周辺の排水溝を使用したが、他の工場設置に当たっては市が排水路の敷設や設備を整える協定となっている。そして、排水に伴う「河川及海水ノ汚損」など、農業・漁業権等との間に生ずる一切の問題は市が責任をもって処理し、工場建設や操業に支障のないようにするとした協定がほとんどである。また、本田技研工業(株)との間では、昭和35年7月に工場内に設置する油分離槽と鍍金廃液処理槽の建設工事費を会社と市が折半で負担するという覚書が締結されていた。