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写真 天保9年(1838)袖中旅日記 |
この旅日記は、飛州高山町二之町の豪商打保屋彦六が、天保9年(1838)閏4月16日の朝早く江戸を出立して、日光・出流・岩船方面の寺社を登頂巡拝し、同月25日に江戸へ帰着するまでの、10日間の旅の様子を記したものである。
供に清四郎なる人物を1人連れての旅であった。
この「袖中旅日記」は、この時代に書かれた一般的な旅日記、たとえば、行程や旅入用を中心に記録しているもの、あるいは参詣した寺院や神社でいただいた御印章(今日の御朱印)を中心にしたものなどとはかなり趣を異にしている。
その特長は次のとおりである。
①この日記は江戸を出立した日から書を始め、江戸へ帰着する手前のところで終わっていること。
②行程は一応日を追って、宿泊したところの地名と宿屋の名前は記録しているが、出費した金銭の記録はきわめて大雑把にしか記録されていないこと。
③参詣した主な寺社の絵(見取図)をかなり正確に描き、その景観に触れた心象を端的に、ごく短い文章で書き添えて旅日記を構成していること。