解題・説明
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口縁部の一部を欠損するが、ほぼ完形である。器高36.0cm、口径12.8cm、最大胴径29.0cm、底径10.3cm。胴部はやや長胴を呈し、最大径を胴部上半にもつ。頸部は短く、僅かにすぼまりながら立ち上がり、口縁部で開く。内面の頸部と口縁部の境に稜をもち、口縁端部は小波状となる。口縁部は、内外面とも縄文が施され、内面には縄文帯の下端に1条の横位沈線を巡らす。頸部は無文で、丁寧なミガキが施される。肩部の上端には、上下を沈線で区画された横位縄文帯が巡り、そこから3単位の縄文帯が垂下する。その内の2単位は、下端で左右に分かれ、各々が下から巻き上げる左右対称の渦文を形成し、残りの1単位は、左回りの渦文となる。渦文内は縄文が磨り消され、縄文帯の内外には、下書きの沈線が部分的に残っている。文様帯の下端を区画する沈線は、渦文に沿って波状を呈し、胴部下半は、全面に縄文が施される。縄文は、口縁部・胴部とも、すべて単節LRである。胴部下半の縄文がすべて横方向に回転施文されているのに対し、文様帯の縄文は、渦文の方向に合わせて回転施文されていることから、磨消縄文ではなく、渦文の下書き内に縄文を充填し、その後、沈線で渦文を描いて、はみ出した縄文を磨り消したものと考えられる。底部はケズリ・ナデ調整であるが、部分的に布目と思われる圧痕が残る。内面は頸部・胴部とも、丁寧なミガキである。また、胴部文様帯の縄文部には赤彩されている。
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