名称: 若葉台遺跡及び羽折遺跡出土奈良三彩
区分: 市指定有形文化財
指定日:令和4年8月24日
所有者:鶴ヶ島市
【概要】
奈良三彩とは、奈良時代から平安時代前期の限られた期間に製作された、緑釉・褐釉・透明(白)釉の三色で彩られる鉛釉(えんゆう)陶器です。中央政権が管理する畿内の官営工房で閉鎖的に生産されたため流通量が少なく、優品は国の重要文化財にも指定されています。その用途は祭事や仏事、葬送、供養、地鎮等に用いる祭祀具ですが、本来の用途を離れ、奢侈品(しゃしひん)や宝器的に扱われたものもあると考えられています。鶴ヶ島市では、昭和52年の若葉台遺跡(富士見)B地点発掘調査で小壺(こつぼ)が3点、平成10年の羽折遺跡(下新田)第1次発掘調査で托(たく)が1点、計4点の奈良三彩が出土しています。埼玉県内では本文化財を含めて11点しか確認されていないため、大変貴重な資料といえます。畿内のみで生産され、地方官庁を通じて各地域に支給されたという歴史的背景を考慮すると、律令体制下における古代鶴ヶ島と中央官庁との文化的なつながりが示唆されます。
No.1
昭和52年の若葉台遺跡B地点発掘調査6号竪穴建物跡から出土した奈良三彩です。器種は「小壺」で、体部の一部分が検出されています。法量は2.7㎝×5.0㎝、ロクロ成形で、軟質で白色の胎土はきめ細やかな砂粒子を含む土で組成されています。外面には緑釉と褐釉が、内面には緑釉が確認されますが、剥落や退色が進んでいます。伴出した遺物の年代から、8世紀前半頃の製作と考えられます。
昭和52年の若葉台遺跡B地点発掘調査7号竪穴建物跡から出土した奈良三彩です。器種は「小壺」で、口縁部から頸部が検出されています。法量は1.5㎝×2.7㎝、ロクロ成形で、象牙色の胎土はきめ細やかな砂粒子を含む土で組成されています。外面には緑釉、褐釉、透明釉が発色の良い状態で残されており、内面頸部には透明釉、頸部には光沢のない赤彩が確認されます。伴出した遺物の年代から、8世紀前半頃の製作と考えられます。
昭和52年の若葉台遺跡B地点発掘調査25号掘立柱建物跡から出土した奈良三彩です。器種は「小壺」で、体部の一部が検出されています。法量は2.5㎝×1.9㎝、ロクロ成形で、象牙色の胎土はきめ細やかな砂粒子を含む土で組成されています。外面には緑釉、褐釉、透明釉が発色の良い状態で残されており、内面には薄く緑釉が確認されます。伴出した遺物の年代から、8世紀前半頃の製作と考えられます。
平成10年の羽折遺跡第1次発掘調査6号竪穴建物跡から出土した奈良三彩です。器種は「托(たく)」で、筒状の受部下方と高台部が検出されていますが、皿部は欠損しています。法量は底径5.2㎝×器高2.9㎝で、軟質で乳白色の胎土はきめ細やかな砂粒子を含む土で組成されています。受部外面には薄く緑釉、褐釉が確認されますが、剥落や退色が進んでいます。伴出した遺物の年代から、8世紀前半頃の製作と考えられます。