福澤諭吉
「運動のための居合」(うんどうのためのいあい) 腰間秋水一揮揚 腰間(ようかん)の秋水(しゅうすい)一気(いっき)に揚(あ)ぐ
亦是乃翁養老方 亦(また)是(こ)れ乃翁(だいおう)の老(お)いを養(やしな)う方たり
二豎多年侵不得 二豎(にじゅ)多年(たねん)、侵(おか)すこと得(え)ず
知他寶劍放龍光 知(し)りぬ、他(た)の宝剣(ほうけん)の龍光(りゅうこう)を放(はな)つを
揮刀為体動 刀(かたな)を揮(ふる)ひて体(からだ)の為(ため)に動(うご)かす
腰に帯びた秋水(刀の名前)を振るのは、老いを養生するためであり、長年にわたり病の化身「二豎」に侵されないのは、この名刀が放つ力のおかげであると、日々の鍛錬について老年の福澤諭吉(1834-1901)が詠んだ漢詩です。福澤諭吉は、幼少の頃に中津藩の抜刀術(居合)の師範中村庄兵衛に立身新流の居合を習い、老年に至るまで稽古を続けました。その腕前は達人の域に達していたと伝えられています。
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