中緯度地帯の函館と北海道の気候

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 函館の気候の特性については、前述のように古くは安政元(1854)年ペリー艦隊の『ペルリ提督日本遠征記』の第1巻に「箱館の冬と春の気候は下田より寒く……」と記されており、開拓使顧問団長ケプロンも、函館の気候がアメリカ北東部各州と比較して同程度であることを述べているとともに、函館の気象資料をもとにして、北海道は中緯度地方としては温和な気候の地域に属し、開拓は有望であると強調するなど、かなり前から論ぜられていたことは確かである。
 北海道は、地理的位置と環境から大きな目で見て、一般に温帯気候の北限である。ドイツ人気候学者ウラジミール・ケッペンの分類によれば、冬季湿潤寒冷気候とされ、アリソフの分類では中緯度気団地帯であるとされているが、北海道は、いわゆる大陸性東岸気候の特徴を最もよく表わしているといえる。つまり、冬季はシベリア大陸に蓄積された寒冷な気団が北西の季節風として運ばれて、きびしい冬をもたらし、夏季は北太平洋の温暖な気団が南東の季節風として流入し、暑さをもたらすが、酷暑となることはない。
 1年間の気温、降水量の経過から見て、北海道と類似の気候を諸外国に求めてみると、北米カナダの東岸、北欧、黒海北部などが挙げられるが、これらの地域はいずれも北海道より高緯度にあたっている。
 すなわち、年平均気温を見ると同緯度の大陸西岸(欧州西部、北米西部)のいわゆる西岸気候帯に比べて低温である。
 特に冬季は北西の季節風が顕著で、日本海が水分の補給源となり、背梁山脈の影響を受けるため、日本海側は降雪が多い。このことは日本列島全体の特徴でもあるが、北海道が日本列島の北に位置していることや、日本が北部で狭くなっていることなどのため、同じ裏日本でも北部などに比べて寒さこそきびしいが、降雪量は少なくなっている。
 北海道は、そのものの位置、地形、水系、周辺の海流などが、気候因子として非常に重要な役割を果たしており、これと実際の気候要素を合わせて、地域的特性から北海道の気候区分を大別すると、日本海側、太平洋側東部、太平洋側西部、オホーツク海側の4区に分けることができ、函館はこのうち太平洋側西部の気候に入る。
 函館は、北海道の南、渡島半島の南岸のほぼ中間に位置し、日本海と太平洋を連ねる津軽海峡にやや突き出た格好になっていて、日本海東側を日本列島沿いに北上して日本海から太平洋に抜ける対馬暖流(津軽暖流)の影響を大きく受けるため、内陸と比べてかなり海洋性の気候となっており、札幌、旭川、帯広などに比べ夏は酷暑とならず、冬は厳寒となることはない。