北海道における石器の移り変わりは、シベリアや沿海州など極東地域に似ている点がある。シベリアは北海道より古い2万5000年前のマルタ・プレチ文化に始まり、中石器時代を経て新石器時代になるが、中石器時代の遺跡から出るゴビ型石核や彫刻刀などは、白滝形彫器及び彫刻刀に似ていて、弓矢の出現を意味するダウル型尖頭器は、北海道の石刃鏃と同じ形態を持っている。石刃鏃は、日本で北海道にしか出土しない特殊な石鏃で、しかも土器の古い時期に現われる。ゴビ型石核の年代と後期白滝文化の年代がほぼ一致するので、何らかの文化関係があったと考えられるが、それより以前の樽岸遺跡など、いわゆる石刃文化がどうして北海道に出現したのであろうか。湊正雄は樽岸文化層をトッタベツⅠ及びⅡの間氷期とし、R・E・モイランは白滝13地点の文化層と樽岸文化層が対比されるとしており、マンモス動物群が北海道に生息していた時代に、マンモスの狩人たちが北の大陸から動物群を追って移動して来たのではないかと推測される。