藩財政の窮乏

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 しかるに、これまでの松前藩の財政および収税体系は、以上のような生産ならびに流通両面での構造的変化に対応できる体制ではなかったのである。すなわち、藩財政は、基本的には大名知行権の主軸をなす、アイヌ交易の独占権を効果的に実現する中で確立することにあるが、藩政初期においては、幕藩体制全体の歴史的条件に規定されて、直領地での交易と砂金・鷹・材木の販売代・零細漁民の現物税・三港での入港税などにあった。従って流通商品も少なく、アイヌ交易品もわずかに獣皮・干鮭・蝦夷錦などという特産物に限定されている中では、実質的には砂金.・鷹等の収入が藩庫の主位を占め、財政基盤はすこぶる不安定なものであった。
 そのため、寛文・延享期以降、この肝心のアイヌ交易が不振に陥り、かつ砂金・鷹の生産が減少するに至って、藩財政は窮乏の一途をたどった。つまり、一方では著しい生産力の上昇をもたらしながら、その上昇分を合理的に収奪しきれないという、収税体系上の矛盾に遭遇していくのである。こうしたところから藩では、藩政改革の必要に迫られ、まずその手はじめとして行われたのが税制の改革であった。